『引き裂かれたカーテン』Torn Curtain,1966,アルフレッド・ヒッチコック



まあ、そこそこの佳作であって、取り立てて高い評価もなく、『めまい』だの『裏窓』だの『サイコ』だの、いわゆる名作の誉も高い優等生たちに比較して、いかにも二〜三枚格落ちで、ニューマンとアンドリュースという組み合わせの違和感だけが残存する作品…かなと、なめておりました。深〜く反省しております。ヒッチコックはヒッチコック。すごい作品でございました。多分小学生か中学生の遥か昔、TVの洋画劇場、多分荻昌弘の月曜ロードショーだったと思う。それ以来の再見。

それでは何がすごかったのか。

ズバリ、殺しの場面に尽きます。東独に亡命したダブルスパイの科学者が尾行を巻いて協力者の居る農家を訪ねるシークエンス。巻いたはずのエージェントが不敵に立ちはだかる。ここから殺害に至るまでのほとんどサイレント映画かと見紛うばかりのセリフのないカット割、かなりの長時間を科学者、エージェント、農婦、タクシー運転手の四人を実に、実にサスペンスフルに短いショットで繋ぎ切っています。それぞれのキャラをキッチリと落とし込んでいるからこそ可能になったカット割。

もう、このカット割を鑑賞するだけでこの作品はお腹一杯、大満足。ヒッチコック、天才!!!当たり前か(笑)。

  作品データ


※以下出典根拠映画ドットコム

監督
アルフレッド・ヒッチコック
脚色
ブライアン・ムーア
製作
アルフレッド・ヒッチコック
撮影
ジョン・F・ウォレン
音楽
ジョン・アディソン
キャスト
ポール・ニューマン、ジュリー・アンドリュース、リラ・ケドロバ、ハンスイェルク・フェルミー、タマラ・トゥマノバ、ルドウィッグ・ドナス、ウォルフガング・キーリング、ギュンター・ストラック、デビッド・オパトッシュ、ジセラ・フィッシャー、モート・ミルス、キャロリン・コンウェル
原題
Torn Curtain
製作年
1966年
製作国
アメリカ
配給
ユニヴァーサル

  解説


ヒッチコック監督の50本記念作品。ブライアン・ムーアが自分の原作を脚色、「マーニー」のヒッチコックが演出したスパイ推理ドラマ。撮影をジョン・F・ウォレン、音楽はジョン・アディソンが担当している。主演は、「動く標的」のポール・ニューマンと「サウンド・オブ・ミュージック」のジュリー・アンドリュース。彼等をめぐり「その男ゾルバ」のリラ・ケドロワ、「栄光への脱出」のルドウィヒ・ドナート、バレリーナのタマラ・トゥマノヴァが絡んでいる。製作も、ヒッチコックが兼ねている。

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