『炎の城』1960,加藤泰



明らかにシェイクスピア悲劇を時代劇に移植させた野心作。エディプス・コンプレックス的側面もあり、主人公と黒幕との人格分裂による対決図式と解釈することも可能。こんな風に紹介するとつい黒澤明の専売特許的なイメージが充満してしまうけれど、それに対抗する力学が当時の東映並びに加藤泰に働いていたのではないだろうか。『蜘蛛の巣城』が1957年公開。

大川橋蔵がハムレット的運命に翻弄される。様式美の追求という点でやはり黒澤明を連想させるが、黒澤のような緊張感漂う押し付けがましいねじ伏せるような力はない。むしろカッチリしたローアングルのキャメラポジションの中に遠影、中影、近影を配置させて、そこから人物/キャメラ共に柔軟な活劇性の中に画面が変化していくダイナミズム。

音楽は伊福部昭。

  作品データ


※以下出典根拠映画ドットコム

監督
加藤泰
脚本
八住利雄
企画
中村有隣
撮影
吉田貞次
美術
吉村晟
音楽
伊福部昭
録音
野津裕男
照明
中山治雄
編集
宮本信太郎
キャスト
大川橋蔵、大河内傳次郎、高峰三枝子、明石潮、薄田研二、伊沢一郎、三田佳子、黒川弥太郎、坂東吉弥、香川良介、河野秋武、水野浩、岡島芝子、五里兵太郎、鈴木金哉、浜田伸一、壬生狂言社中、波多野博、河村満和、田中亮三、嵐歌之介、汐路章、智村清、石丸勝也、滝川浩、春路謙作、源八郎、牧淳子、南郷京之助、相原昇三郎、神木真寿雄、西条菊太郎
製作年
1960年
製作国
日本
配給
東映
上映時間
98分

  解説


「ぼく東綺譚(1960)」の八住利堆の脚本を、「あやめ笠 喧嘩街道」の加藤泰が監督した日本版“ハムレット”。撮影は「妖刀物語 花の吉原百人斬り」の吉田貞次。

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