『ナポレオン』Napoleon ,2023,リドリー・スコット



力作ではありますが。

私の興味は一点、国民国家を形成することになる近代軍を史上初めて作った人、ということ。それがどのように描かれているのか、いないのか。民主主義なんてワードもセリフに散見されて、それなりに近代というものの萌芽を婉曲に意識させる立て付け。

まあ当たり前なのでしょうが、ナポレオンの人物像、ナポレオンってどんな人だったの?ってあたりで80%が使われていました。有名なチーズの下ネタジョークも想起させられるジョセフィーヌとのラヴ・アフェア。そこで吐露されるナポレオンのマザコン振り。そもそもマザコンなんて近代自我確立してから「発見」されたビョーキのような気がして、フェリックス・ガタリ先生あたりに確認してみたい気もする。リドリー・スコットが近代の成立をどこまで意識したかはわからないけれどフランス革命を経て近代の成立がなければ絶対に存在し得ない人物にかなり不徹底ではあるが、迫ってはいたとは思う。戴冠式の神でもバチカンでもなく、自らの保証によって皇帝となるシークエンスはその証左。ワーテルローにおける人類初の近代戦もおそらく史実を元に再現されていたのであろう。それ相応の迫力ある画面構成となっておりました。

現在のパレスチナやチベットやウクライナや北鮮や香港の淵源がそこにあったのだ。しかし本作を観る限りそのことにはまだまだ全く気づく気配もないし、正面から向き合おうともしていない英仏を筆頭にした西洋人たちの傲慢と怠惰を今回も確認できるのみ。

それにしてもみんな呑み食いしまくっていましたね。呑み食い映画でもある。

  予告編


  作品データ


※以下出典根拠映画ドットコム

監督/リドリー・スコット
製作/ケビン・J・ウォルシュ、マーク・ハフマン、ホアキン・フェニックス、リドリー・スコット
製作総指揮/レイモンド・カーク、エイダン・エリオット、マイケル・プラス
脚本/デビッド・スカルパ
撮影/ダリウス・ウォルスキー
美術/アーサー・マックス
衣装/ジャンティ・イェーツ、デビッド・クロスマン
視覚効果監修/ニール・コーボールド
キャスト/ホアキン・フェニックス、バネッサ・カービー、タハール・ラヒム、マーク・ボナー、ルパート・エベレット、ユーセフ・カーコア
原題/Napoleon
製作年/2023年
製作国/アメリカ
配給/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
上映時間/158分

  解説


「グラディエーター」の巨匠リドリー・スコット監督が「ジョーカー」のホアキン・フェニックスを主演に迎え、フランスの英雄ナポレオン・ボナパルトの人物像を新解釈で描いた歴史スペクタクル。

18世紀末、革命の混乱に揺れるフランス。若き軍人ナポレオンは目覚ましい活躍を見せ、軍の総司令官に任命される。ナポレオンは夫を亡くした女性ジョゼフィーヌと恋に落ち結婚するが、ナポレオンの溺愛ぶりとは裏腹に奔放なジョゼフィーヌは他の男とも関係を持ち、いつしか夫婦関係は奇妙にねじ曲がっていく。その一方で英雄としてのナポレオンは快進撃を続け、クーデターを成功させて第一統領に就任、そしてついにフランス帝国の皇帝にまで上り詰める。政治家・軍人のトップに立ったナポレオンと、皇后となり優雅な生活を送るジョゼフィーヌだったが、2人の心は満たされないままだった。やがてナポレオンは戦争にのめり込み、凄惨な侵略と征服を繰り返すようになる。

妻ジョゼフィーヌ役に「ミッション:インポッシブル」シリーズのバネッサ・カービー。「ゲティ家の身代金」でもスコット監督と組んだデビッド・スカルパが脚本を手がけた。

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