『逃げきれた夢』2023,二ノ宮 隆太郎



上田映劇で朝イチ上映。自宅からだと2時間前の7時半には出発しないと間に合わない。と、半分ボヤキながら鑑賞。いやあ〜朝からええもん見せてもらいましたわ〜♫早起きした甲斐あり!素晴らしい作品でした。

アフタートーク、二ノ宮監督のお話の中で光石研へのリスペクトを語っておられましたが、リスペクトどころか、めっちゃディープな愛情が溢れかえっておりました。

兎に角、歩く、歩く、歩く、前半。歩く映画にハズレなし。北野武ヴィム・ヴェンダース吉田喜重がどれだけ歩いていることでしょう。これは二ノ宮の光石へのマゾ的愛情表現では(笑)と思えるほど歩きまくっています。

はっきり言って低予算の会話劇にせざるを得ない面もあるのでしょうか。その単調になりがちな会話劇に対する反乱分子として光石が歩き回っておりまする。この誰も止められない光石研の快進撃をぜひご覧いただきたいのです。

松重豊とのじゃれ合いみたいな諍いのあと、家庭に戻った光石研。ここからが、この作品の本当の見せ場だと思います。あれほど歩きまくっていた光石がドスンとリヴィングの床にどっ座って語り始めます。この長回しの素晴らしさ。この光石、妻、娘のそれぞれが独立した画格のショット!

このシークエンス以降、歩く人=光石研は、語る人=光石研に変容します。これがさらに素晴らしいのです。前述のリヴィングでもモノローグに近い会話劇のあと、元教え子の蕎麦屋の店員と“デート”するシーン。カフェでのダイアローグやカフェの外での最後の二人のシーンがなんとも格調高いのです。

プロデューサーさんのお話でも、元々二ノ宮監督は会話シーンは長回しを多用するスタイルなんだそうです。ダイアローグ・ショットは発話者の顔を捉えるのに聞き手の肩舐めの切り返しショットで繋いで行くのが定番です。今回はこの定番も長回しも廃してチャレンジしたそうです。小津安二郎みたいな発話者だけを正面から捉えた立派なショットで繋いでいきます。

エンド・タイトルには今をときめく「四宮秀俊」のクレディット。ちょっとビックリ。そして、なるほど、なるほど、です。

必見中の必見!!!

  予告編

  作品データ


※以下出典根拠映画ドットコム

監督/二ノ宮隆太郎
脚本/二ノ宮隆太郎
製作総指揮/木下直哉
プロデューサー/國實瑞惠、関友彦、鈴木徳至、谷川由希子
撮影/四宮秀俊
照明/高井大樹
録音/古谷正志
美術/福島奈央花
装飾/遠藤善人
衣装/宮本まさ江
ヘアメイク/吉村英里
編集/長瀬万里
音楽/曽我部恵一
助監督/平波亘
制作担当/飯塚香織
キャスト/光石研、吉本実憂、工藤遥
末永由真、杏花、岡本麗、光石禎弘、坂井真紀、松重豊
製作年/2023年
製作国/日本
配給/キノフィルムズ
上映時間/96分

  解説


光石研が12年ぶりに映画単独主演を務め、人生のターニングポイントを迎えた男が新たな一歩を踏み出すまでの日々をつづった人間ドラマ。

北九州の定時制高校で教頭を務める末永周平は元教え子の平賀南が働く定食屋を訪れるが、記憶が薄れていく症状に見舞われ、支払いをせずに立ち去ってしまう。ふと周囲を見回してみると、妻・彰子との仲は冷え切り、娘・由真は父親よりもスマホ相手の方が楽しそう、さらに旧友・石田との時間も大切にしていなかったことに気づく。これからの人生のため、これまで適当にしていた人間関係を見つめ直そうとする周平だったが……。

元教え子・南を吉本実憂、妻・彰子を坂井真紀、娘・由真を工藤遥、旧友・石田を松重豊が演じる。「枝葉のこと」などで国内外から高く評価された二ノ宮隆太郎監督が、「2019フィルメックス新人監督賞」グランプリを受賞した脚本をもとに自らメガホンをとった商業デビュー作。

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