『怪物』2023，是枝裕和
早速賛否両論アップされているようですが私は賛です。凡庸な駄作『ベイビー・ブローカー』の100倍良かったです。公開直後でもあり、これからご覧になる方はこのレヴュウ、ぜひパスしてください。ご覧になってから存分に語り合いましょう。
典型的なグランドホテル形式の説話構造。軸は3つ、母親、教師、子供。ビル火災を起点に同一の時系列に派生する出来事群を異なる主人公たちにフォーカスして語る。欺瞞に満ちた真実なるものの相対化という訳だ。これはサスペンス映画などで昔からある形式で、敢えて言えば、それを是枝的子供の世界に持ち込んだことが目新しいと言えなくもない。
特筆すべきは要所要所のポイントで起用される田中裕子の圧倒的な存在感だ。樹木希林を失った今、それに代わり得る是枝組への参入を予感させる。兎に角出てくるたびに怖いのだ。もう一つ。豪雨が収まり日が差してきた放置列車のアジールを抜け出して尾根沿いの草原を雄叫びを挙げながら駆け抜けるキャメラワークの開放感！これがラストショットなのですが、このワンショットを観るだけでも鑑賞の価値があります。さらにもう一つ。ちょい役で出てくる小学生役の女の子。BLのみなと君への恋慕が暗示されていて難しい役どころをことも無げに演じていて末恐ろしい。
私にとってはロケ地が、地元中の地元でした。なんと言っても諏訪湖の俯瞰が素晴らしい。ベランダや屋根から投げかける視線の映画でもあります。
予告編
作品データ
※以下出典根拠映画ドットコム
監督/是枝裕和
脚本/坂元裕二
製作/市川南、依田巽、大多亮、潮田一、是枝裕和
エグゼクティブプロデューサー/臼井央
企画/川村元気、山田兼司
プロデュース/川村元気、山田兼司
プロデューサー/伴瀬萌、伊藤太一、田口聖
ラインプロデューサー/渡辺栄二
撮影/近藤龍人
照明/尾下栄治
録音/冨田和彦
音響効果/岡瀬晶彦
美術/三ツ松けいこ
セットデザイン/徐賢先
装飾/佐原敦史、山本信毅
衣装デザイン/黒澤和子
衣装/伊藤美恵子
ヘアメイク/酒井夢月
音楽/坂本龍一
キャスティング/田端利江
スクリプタ−/押田智子
助監督/森本晶一
制作担当/後藤一郎
キャスト/安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子
製作年/2023年
製作国/日本
配給/東宝、ギャガ
上映時間/125分
解説
「万引き家族」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、映画「花束みたいな恋をした」やテレビドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」などで人気の脚本家・坂元裕二によるオリジナル脚本で描くヒューマンドラマ。音楽は、「ラストエンペラー」で日本人初のアカデミー作曲賞を受賞し、2023年3月に他界した作曲家・坂本龍一が手がけた。
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。
「怪物」とは何か、登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに訪れる結末を、是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一という日本を代表するクリエイターのコラボレーションで描く。中心となる2人の少年を演じる黒川想矢と柊木陽太のほか、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子ら豪華実力派キャストがそろった。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され脚本賞を受賞。また、LGBTやクィアを扱った映画を対象に贈られるクィア・パルム賞も受賞している。
