歳月が経つと、昔は見えていなかったこと、理解できなかったことが、文字どおりストンと落ちることがある。

あの時、ああいう風な言葉をいわれたけど、あれは実はこういう意味だっのね。と。


高校で大好きだった同級生のNちゃんをいつも不思議に感じていた。
一緒に部活に励み、その帰りにラーメン→あんみつのはしごをして、じゃあ、また明日と別れる……私は歩いて5分くらい。彼女は、電車を乗り継いで30分以上で帰宅。

なのに高校からふざけ始めた(ものは言いよう)私の成績は素晴らしい右肩下がり。

Nちゃんときたら、5教科に穴もなく、軽く偏差値は70以上だったはず。

いつ勉強しているんだろう。
いや、おそろしく効率のいい勉強をしているのかな。

そんなある時、教室に二人で残っていた時だ。
彼女が確か誰かに呼ばれて、
ノートを机に置いたまま席を離れた。

きっちりノートをとっているんだろうなと、
横目でチラリとみた。

と、ノートの片隅に走り書きがあった。
シャーペンで大きめの文字で斜め書きだ。

?、なになに。読み込むと、、、

罫線入りノートの1ページに、たった2行だけ書いてあった。


なすがまま


ふむふむ。なるほどね。彼女、自由人だものね。
ま、同類だけども。
で、2行目はこうだった。今でもはっきり覚えとる。


きゅうりがぱぱ


はあああ???

5秒後、西日の差し込む放課後の教室で、ひとり私は笑った。

なるほどな。
確かにね。

なすがママ

なら、、、

きゅうりはパパであろう。


間違ってないよ。


教室に戻ったNちゃんに聞いてみた。
「ねえねえ、何これー」

するとNちゃん、小さく微笑んで
「見たままだよ」って。

深いのかなこの言葉、と思ったが、
とりあえず、いつものように、
ラーメン→あんみつでその日も暮れて行った。


そうして、月日は流れに流れww
彼女の言葉を今、反芻してみる。

日本が8年ぶりにW杯決勝T進出を決めた
この夜に。

なすがまま
きゅうりがぱぱ


気の遠くなるような歳月を経て、ふと思い返した言の葉は、それ以上でもそれ以下でもなかった。