U-NEXTで1996年作品「トキワ荘の青春」を見た。

 プロマンガ家として生活をしつつも、時代の流れに乗り切れないジレンマを抱えている寺田ヒロオ(本木雅弘)。

 寺田の住むトキワ荘には大先輩のマンガ家手塚治虫も住んでいた。手塚はすぐにトキワ荘を出てゆくのだが、その後に入ったのは新人マンガ家藤子不二雄の二人。それ以外にも石森章太郎や赤塚不二夫など、のちの大マンガ家達もいて、時に語らい、時に飲み明かしながらそれぞれがそれぞれのマンガについて切磋琢磨していた。

 でも、みんな努力しているのだからみんな売れるとはならないのが現実。

 売れたやつは忙しくなっていき、売れないやつは暇な時間が惨めになってゆく。そして、去る者も出て来る。

 寺田もそろそろ進退を決めなければならないと思っていたある日、藤子達に誘われて相撲を取る。そのシーンがどうにも切なかった。ぶつかり合いながら、お互いの本気を確かめ合うような、さようならを言い合っているような、そんなシーンだった。

 本木の抑えた演技が寺田の人の好さを上手く表現していた。はしゃがない演技の阿部サダヲも珍しい。

 やりたいことがあるのなら、周りにどう言われようともやりたくなくなるまで続けていればいい。それは安定を捨てることであり、最後は野垂れ死にかもしれない。死ぬ瞬間、結果が出なかった人生に後悔するかもしれないが、そこまでやりたいようにやって来た人生に嘘はないからそれでいいと思う。