私がまだ、高校を卒業して会社勤めをしていた頃の話です。

 2歳年下の後輩と、どういう人が好みか、という話をすることがありました。

 私の場合、見た目で何となく、

「技術科の〇〇さんとか、生産課の××さんとかがいいな」

 と答えていましたが、実際にその人に対して好意があるわけでもなく、親しくなりたいとも思っていませんでした。

 確か、技術科の〇〇さんは既婚者ではなかったかと思います。

 

 ところが、その後輩から、

「来週の金曜日は空けておいてくださいね」

 と言われ、会社が終わった後、ある飲食店へと連れて行かれました。

 

 私はその後輩と2人での食事かと思っていたのですが、着いてびっくりです。

 技術科の〇〇さん初め、〇〇さんの部下と思しき4名ほどの男性が揃っていました。

 えぇぇっ、何これ、どうしよう!? というのが、正直な私の気持ちです。

 だって、その○○さんとも初めて話をするくらいだし、部下と思しき4名も以下同文です。

 

 そもそも、総務部での飲み会とか、課長から連れられて、というのはありましたが、製造部門の全く知らない人たちとの個人的な飲み会ということ自体が初めてでした。

 知らない人と飲んでも楽しくないし、お酒自体、私は飲みません。

 〇〇さんはともかく、連れて来られた部下の人たちに、本当に申し訳ないと思いました。

 もしも事前に、

「〇〇さんと飲み会やりますが、来ますか?」

 と、その後輩がきいてくれていたら、間違いなく断ってました。

 

 それでも、せっかく集まってくれているし、後輩も、私が〇〇さんの名前を挙げたから、好意でセッティングしてくれた飲み会だと思います。

 なので、1度はつきあわないと、と思いました。

 

 私と違って、後輩は製造部門の人たちと、気軽に飲み会など楽しんでいたようです。

 1ヶ月ほどしたら、

「また〇〇さんと飲み会やるので来てください」

 と言われて、心底困ったなと思いました。

 同時に、

「どうしてセッティングする前に、私の都合をきいてくれないかな」

 とも思いました。

 

 たまたま、友人と会う話が出て、その友人が提案した日と、その後輩から誘われた日が同じでした。

 本来、後輩からの誘いの方が先約です。

 いつもの私なら、

「その日はもう予定が入ってるから」

 と、友人の方を断ります。

 

 でもこのときばかりは、友人とその日に約束をし、後輩には、

「本当にごめんね。その日、ちょっと別の大事な約束が入ってしまって」

 と断りました。

 

 そうしたら、こっちが先約だったのに、と思ったのか、せっかく○○さんとの飲み会をセッティングしてあげたのに、と思ったのかは分かりませんが、

「知沙さん、酷い」

 と、ちょっと涙目な感じで言われました。

 

 

 いや、酷いって言われても……。

 私の方から「○○さんとの飲み会をセッティングして」と頼んでおいてのドタキャンなら、そう言われても仕方ありません。

 でも、先に飲み会をセッティングして、私には事後承諾で「参加しろ」って言ってるわけじゃないですか。

 1度はつきあったのだし、事後承諾なら断る権利もあっていいだろう、と思いました。

 

 幸い、私の気持ちを察してくれたのか、私が断ったことに腹を立て、

「2度と誘ってやらん!!」

 と思ったのかは不明ですが、それ以降、後輩から誘われなくてホッとしました。