母がもう自宅へは帰れないと確定した時点で、とりあえず母の友達へも知らせておかないといけないんだろうな、と思った。

 とは言っても、母も90歳手前。

 お付き合いのある友達もだんだん減って来て、知らせる必要があるほど仲が良いのはほんの数人。

 

 家庭菜園をやっていて、食べきれない野菜をいつも持って来てくれる照美さんには、野菜をいただいたときに伝えた。

 ちょっと心配だったのが、

「母が家にいなくなっても、野菜を持って来てくれたらどうしよう」

 ということ。

 

 私の友人ではなく、母の友人だけに、

「お返しをどうしようかな」

 とか、

「どのタイミングで持って行こうかな」

 とかいうことで頭を悩ませそうだからだ。

 

 結局、母のことを伝えたら、それ以降は全く連絡がなくなったので、ホッとした。

 お返しを用意しなければいけないとしても、低農薬の野菜をどっさりいただけたのはありがたいので、ちょっとだけ残念な気もするけれども。

 

 

 

 母よりも年上、もうすぐ95歳の敏子おばあちゃんは、とってもかわいい人。

 電話がかかって来ても、立ち上がるのに時間がかかって間に合わないと、もしかしたら母がかけたのかと思って、わざわざうちまで来てくれる。

 なので、敏子おばあちゃんのところだけは、すぐに母のことを伝えに行った。

 

 敏子おばあちゃん、同居する長男のお嫁さんがかなり酷い人でね。

 代わりに年金をおろしに行って、全額くれないとか。

 そのくせ、お買い物に行くときは敏子おばあちゃんも連れて行ってくれるけど、長男夫婦の買ったものまで全部の代金を払わせたりするらしいの。

 

 なので、「母が買ったけど食べられないもの」とか、間違えて買ってしまったものなどを、ときどきもらってもらってた。

 そうすると、

「ええ、いいの? こんないいもの食べられないわ、うれしいわぁ」

 と無邪気に、素直に喜んでくださる。

 

 ところが、長男のお嫁さんが、

「うちのおばあさんに食べるものなんか持って来ないで!

 病気にでもなったらどうしてくれるの!?」

 と怒鳴りつけるとかで、近くに住んでる次男も、何も持って行ってあげられなくなったらしい。

 

 

 いやいや、普通に畑で採れた野菜で、次男たちも食べているものなのに、それを敏子おばあちゃんが食べたからって病気になんかならないでしょ。

 それも、自分たちのところに持ってくるのは大歓迎だけど、敏子おばあちゃんに持って行くのはダメってびっくり

 

 で、次男が何も持って来られなくなったために、いつも敏子おばあちゃんが困ってた。

 だから、こっそりうちへ取りに来てもらってた。

 母がいなくなって接点が無くなってしまうと、敏子おばあちゃんがどうしてるか分からなくなるから、それはちょっと気になるけどね……ショボーン