うちの職場、車で5分くらいのところに別の事業所がある。

 そこに、30歳ちょっと過ぎの、
「子供が保育園に入ったので短時間だけ働きたい」
 という女性のパートが入った。
 
 数ヶ月して、そのパートさんがうちの事務へ回されてきた。
 本当かどうか知らないけど、
「あっちで使い物にならないのでこっちに回されてきた」
 という噂。
 
 ちょっと待て!?
 あっちで使い物にならないような人を回されても困るんですけど!?
 とは言え、私は仕事の内容が変わった後で、そのパートさんと一緒に仕事するわけじゃないから、まあいいけどさ。

 とか思っていたら、うちの職場、マニュアルも研修もなしに新人を現場へ放り込むという悪い癖(?)があって、新人は皆、同じ間違いをするわけさ汗
 
 で、新卒で入って来た正社員の女子もまた、同じ間違いをするといかん、と思ったので、
「うちってマニュアルとかないからさぁ。みんなが最初によくやる間違いを書いといたわ」
 と、A4用紙に2枚程度のメモ書きを渡した。
 
「これ、○○さんにも説明してもらっていいですか!?」
 読み終わった新卒正社員の子が目を輝かせていうので、使い物にならないという噂のパートさんにも同じ説明をした。
 
 すると、その説明を聞き終わったパートさんが言った。

「私、手がすっごい荒れ性なんですぅ」
 
 …………はい?
 
「洗いものとかすると、手がぼろぼろになっちゃってぇ」
 
 いま仕事集なんだけどね、と思いながら、
「合成界面活性剤の入ってない洗剤を使えば?」
 とアドバイスした。
 
「やっだぁ。だって油汚れが全然落ちないんだもん」
 
 確かに、合成界面活性剤を使ってない洗剤では、油のべとべとは落ちにくい。
 その分、環境にも優しいし、手も荒れない。
 だから私は、洗う前にトイレットペーパーで油汚れを拭いておくとか、アクリルタワシを併用するとかしている。
 別に手が荒れて困ったことはないけど、肌にも環境にも優しい洗剤の方がいいと思って。

 しかしそのパートさんは、油汚れの落ちることを優先したいようである。
 
「だったら、ゴムの手袋はめたら?」
「ええー、やだぁ。使いにくいもん。滑るし」
「それじゃあ、手が荒れても仕方ないんじゃないの?」
「やだぁ。手が荒れないのがいい~」
「だったら、合成界面活性剤が入ってない洗剤を使えば」
「油汚れの落ちるのがいい~」
「じゃあもう、手袋はめるしかないって」
 
 同じやり取りをもう2周したのに、延々と同じ訴えをしながら、
「何かいいものなぁい?」
 
 知らんわっムカムカ
 私はあんたの友達でもないし、第一いま仕事中だっつーのムキー
 
 使い物にならん、というのは仕事のできるできないではなく、こういうことろだろうか?
 とは思ったけれど、こういう性格は治るものでもないと思うし、それっきり接点もないので放置。
 
 半年ほどしたら、そのパートさんは辞めて行った。
 辞めた理由は知らない。
 でもあれじゃあ、どこへ行っても注意されてばっかだろうなぁ。