今日は5月15日。今から84年前の昭和6(1931)年にあの5.15事件が起きた日です。

 さて、こうして帝国陸海軍の名将と愚将を交互に取り上げていると、5.15事件や2.26事件の際、射殺された犬養首相と護衛の警察官のお二人はお気の毒でしたが、事後処理で将来を嘱望された優秀な軍人たちを大勢死なせてしまったことが悔やまれます。とりわけ、5.15事件の古賀清志海軍中尉・山岸宏海軍中尉、2.26事件の村中孝次陸軍大尉、磯部浅一一等主計・安藤輝三陸軍大尉はその最たる例ではないでしょうか? 合掌



 5.15事件を報じた新聞記事
 写真はWikipediaから引用。 


 皮肉な事に、両事件以後、粗雑な人物が軍部内で幅を効かせ、後に指揮官となり、大勢の日本軍将兵を無駄に死なせていることを振り返ると、やりきれない想いで胸が一杯です

 +*+*+*+*+*+*+*+*+*+*++*+

愚将十奸 ~
帝国陸海軍の名誉を貶めたトンデモない将校たち~

其乃伍:最低軍人牟田口廉也と極悪タッグを組んだ超保身型軍人 河辺 正三 陸軍大将

 本シリーズで愚将の筆頭に名前を挙げさせて頂いたのは牟田口廉也陸軍中将でした。そんな彼と極悪タッグを組んだのが河辺正三陸軍大将です。ほとんどの方が、名前すら聞いたことがないのでは?

 そのそも、名前の読み方からして複雑で、「かわべ しょうぞう」ではなく、「かわべ まさかず」です。さすがに読める人は、失礼ですが、読者の皆さんの中に一人もおられないのでは?

 河辺は明治19(1886)年12月5日、富山県砺波市で誕生。輝かしい軍歴をもち、昭和7年に歩兵第6連隊長に就任した後、支那駐屯歩兵旅団長、北支那方面軍参謀副長、中支那派遣軍参謀長、第12師団長、第3軍司令官、支那派遣軍総参謀長、ビルマ方面軍司令官、中部軍司令官、第15方面軍司令官兼中部軍管区司令官などの要職を歴任。終戦時は航空総軍司令官でした。



 河辺正三 陸軍大将
 国運よりも保身を優先したトンデモない軍人です。


 軍歴だけで判断すれば、いかにも立派な軍人ですが、実は河辺は、あの牟田口の上司でした

 そして、部下である牟田口が推進したインパール作戦に対し、それを認可したのが河辺でした。その際、河辺は「何とかして今の内に印度の要衝に突入して事変の解決にまで持って行きたき壮大なる意見なり」と牟田口を持ち上げた上で、「かねてより牟田口が熱意を持って推進してきた作戦なのでぜひやらせてやりたい」などと、いとも簡単に牟田口の無謀な作戦計画を全面的に支持したそうです。

 ところが、同作戦の遂行が滞り、日本軍の敗色が濃厚となった昭和19(1944)年6月、河辺は牟田口を訪問。戦況を確認し合った際、2人とも同作戦の失敗を認めた上で、その中止の是非を検討しました。それは、後に牟田口本人が防衛庁防衛研究所戦史室の取材に対し、「(上司である河辺には)言葉ではなく、私の顔を見て真意を察して欲しかった」と語ったことからも推察することができます。

 つまり、この2人が面会した時点で、牟田口には、河辺の口から同作戦の中止命令を出させることで、作戦失敗の責任を河辺にも被らせようというしたたかな狙いがありました。自らの失敗を潔く認め、その責任を負う覚悟が皆無であった牟田口こそ帝国陸軍最低の軍人です。

 一方、河辺もそんな牟田口を庇おうとはしませんでした。所詮は2人とも、前線で文字通り死闘を展開し、すでに死線を越えて久しい大勢の部下たちよりも自らの保身を最優先しました。トンデモない・・・

 結局、同作戦の中止決定は遅れ、損害は拡大。戦闘で華々しく散るのではなく、第15軍、つまり牟田口から食料の補給を止められ、ガダルカナル戦と同様に無残に餓死した将兵が少なくありませんでした(作戦に加わった日本軍将兵約9万人のうち、戦死者・戦病死者3万人超、後送戦病者約2万人)。

 先の戦争が終わってから今年でちょうど70年が経ちますが、無謀な作戦で多大な損害を招いた張本人の牟田口、そしてその暴走を許した河辺には、歴史を遡って、インパール作戦で散った私たちの尊い先人たちに対して無謀な作戦を強いた責任を厳しく追求しなければいけないと私は断じます。

 ザケンな!このヤローッ 

 ただし、河辺は、戦後、特攻平和観音奉賛会という団体の発起人を務めています。つまり、自分の葬式時に至るまで自己弁護に明け暮れた牟田口よりは、まだいくらかましかもしれません

 そして、河辺は昭和40年3月2日に逝去。享年78歳。合掌

※どんなに生前の評価が酷い人でも、仏になれば話は別。手を合わせて祈るのが日本人の精神性だと私は思います。ただし、河辺と牟田口が犯した罪は、死んで消滅するものではありません。


 
 なお、当ブログはアメブロ以外の各種ブログランキングにも奮って参戦中です。当ブログのメジャー化にご協力頂ける御方は、お手数ですが、以下のバナーをそれぞれクリックしてください。ブログ運営の活力とさせて頂きますので、ご支援の程よろしくお願いしますm(_ _)m    白髪磨人





ブログランキングならblogram


  今回は以上です。またもや文末で表現を取り乱してしまい、申し訳ありませんでした