NHKラジオのニュースを聞いていて、天然果汁のオレンジジュースが値上げや販売中止になっていると報じていました。
5月30日にテレビで放送された

愛媛のあのジュースも オレンジに“異変”で値上げ 販売休止

のラジオ版のようです。
ブラジルが天候不順、病害でオレンジが不作になった。そして円安の問題もあります。買い負けたり、高価格で買わなければいけなくなった。そのために天然オレンジ果汁が手に入らなくなった、価格が高くなったということのようです。

それでは国産みかんに替えたらという話になりますね。当然そのような話になっているようで、

オレンジジュースの価格が約2倍に高騰 世界的不作で異常事態 国産みかんには追い風か?

では、協同乳業が

「今年4月、国産果汁だけを使用した『農協果汁』という商品を14年ぶりに復活」
「関心が高まっているので、国産果汁の良さやおいしさを知っていただく機会になればいいと思っています」

とコメントしています。
ところが、NHKの記事に戻ると、国内産みかんにも問題があるようです。「需要に応えるために、果汁の生産量を増やしたい」が、「原料のかんきつの果実を調達するのが難しい」のです。つまり、「原料となるかんきつを増やすことができない」のです。

それは、

「かんきつは生で食べるために作っているため、ジュース用に使える果実は多くない」
◎「農家は基本的には生食用(かんきつはを生産している)」
「気候条件とか管理不足とか重なって規格外になってしまうものがジュースの原料になる」
「農家が減って生産量もどんどん減っている」
◎「かんきつの木が収穫できるまで成長するには、苗を植えてから3年ほどかかる」
「すぐに生産量を増やすこともできません」
「ジュース用に買い取られる果実は規格外のため生食用の10分の1ほどの価格」

ということです。

これは、みかん、かんきつ類にかかわらないです。様々な分野で「輸入自由化」されていますが、外国産の生産物と争うために日本の生産者は品質を上げたり、付加価値をつけたりして独自の販売先を確立しています。牛、豚、鶏、梅、キノコ類などの農家も、鯖、鮭、鰻などの漁師も、木材の林業関係者もです。

利益を出すために品質には気を使っています。そのために加工用になるものは単価が安くなるのでできるだけ減らすように努力しています。単価が安いと利益が出ないからです。そして日本は国土が狭いので「大規模化」には適しません。大規模化するのではなく細かく手をかけることで付加価値をつけています。それを少ない人数で実行するために機械を使います。ここではエネルギー、石油、電気を使います。そのような考え方で生産するため、今回のような加工用のものを大量に生産するのには向かないのです。

そして、急に輸入量が減ったから「国産」でと言っても魔法のように数量をそろえることなどできません。工場製品でもリードタイムがあるのです。自然を相手にするとこのリードタイムもどうしても長くなります。1年だと短いものです。今回のかんきつの場合も「3年」ということです。

つまり、政治家、官僚、学者が数字の入れ替えをするようには、自然を相手にするものは輸入品が減ったから国産品で代替することなどすぐにはできません。

このNHKの記事の愛媛放送局の記者が、

「私たちの生活がいかにグローバル化の恩恵を受けてきたかを改めて思い知らされました」

とおっしゃっているのは真実です。裏を返せば、「恩恵が受けられなくなったら打つ手がなくなる」ということです。今回のように「天然オレンジ果汁が入ってこなくなったらオレンジジュースが高騰、販売休止になる」のです。ウクライナ紛争で、小麦の輸出ができなくなりアフリカの多くの国は食糧危機になります。

戦争は人が努力すれば防げます。そして止めることもできます。これは必要なことです。
しかし、自然、天災は予測も防ぐことはできません。確かにグローバル化は良いことです。恩恵が大きいです。ただし人間が制御、管理できている間はです。そして人間の限界などあちこちにあります。
そういう意味で「グローバル化」をもろ手を挙げて賛成できません。常にリカバリープランが必要だと思います。しかし、過去を忘れるのが人間なのです。歴史を忘れてしまいます。