むかしむかし、道化がおりました。あちこちを見て回っておりました。いろんなところを見て、話を聞くことが好きだったのです。

ある時都に行き、殿様にお目通りしました。道化は殿様に向かってあちこちの話をおもしろおかしく聞かせました。殿様は道化をたいそう気に入りました。そして、道化が都にいる時はいつもそばにおいて話を聞いておりました。

道化はあちこちを回り、都に戻って殿様に話をするというくらしを続けておりました。
ある時、道化はある峠の近くの2件のお茶屋の近くを通りました。主人たちから、朝峠から海からお日様が出るのが大変きれいだということを教わりました。そこで、道化はどうしても日の出を見たくてお茶屋に泊めてもらいました。

次の朝、道化はお日様が出るずっと前に起きると、お茶屋にお礼を言って峠へ向かいました。お日様が出る前に峠に着いた道化はそこに1本の大きな木があるのに気が付きました。そこで道化はその大きな木に登ってお日様が出るのを待ちました。
するとすぐにお日様が海から出てきて、素晴らしい景色を見ることができました。お日様が完全に出てしまってから、道化は大きな木から降りました。
ところが、道化は足を滑らしてしまい、木から落ちてしまいました。そして不幸なことに片足を折ってしまい動かなくなってしまいました。

そこで道化は仕方なく都へ戻って静養することにしました。道化のことを聞いた殿様は大変怒って、その大きな木を切り倒してしまいました。しばらくして道化は元気になると、またあちこちを見て回ってみたくなりました。そこで道化は殿様に片足でも乗れる荷車を作ってもらい、馬にひかせました。そして、民に、道化の言うことには何でも従うようにというおふれを出してもらいました。

以前のように出かけることができるようになった道化は、またあちこちを回るようになりました。そしてまた都へ戻ってくると殿様にあちこちの話をしました。そして殿様も大変喜びました。

そして数年が経ちました。そんなある時道化はまたあの峠の近くの2件のお茶屋の近くを通りかかりました。それまで道化はここを通るときはいつもどちらかのお茶屋に寄ってお団子を食べて休憩していました。
その日は大変お天気が良い日でした。そこで道化は2階に席がある方のお茶屋で休憩することにしました。2階席からの眺めがいいからです。ところがちょうどその日は2階席があるお茶屋の主人は外出していて留守でした。そこでおかみさんは「主人もいないので階段を登るのが危ないので、お隣で食べられてはいかがですか。」と言いました。しかし道化は2階席から海が見たくて「以前も手伝ってもらって登れたし慣れている。お前が手伝ってくれれば片足だけでも大丈夫だ。」と言って聞き入れませんでした。
仕方なくおかみさんは道化が階段を登るのを手伝いました。最後の一段になっておかみさんは「もう大丈夫だ。」と思いほっとしました。ところが最後の一段を登ろうとしたおかみさんは足を滑らせてしまいました。ドスン、ガラガラ、ガラガラと二人とも階段の下に落ちてしまいました。
おかみさんは何ともなかったのですが、またまた不幸なことに道化はもう一つの足も折ってしまい両足とも動かなくなってしまいました。

そこでまた道化は都に戻って静養することになりました。道化のことを聞いた殿様はまた怒って、おかみさんの両足を切ってしまいました。

こっぷりこれでおしまい。