すると、あつまった魂たちのなかから、
『友情あふれる魂』が、すすみでました。

「心配しなくていいわ。ちいさな魂さん。」友情あふれる魂はいいました。

「わたしが助けてあげる。」
「きみが?」

ちいさな魂は、ぱっと顔をかがやかせました。
「でも、きみになにができるかなあ?」

「なにか、あなたに『ゆるされる』ことをしてあげるわ」
「そんなことできるの?」
「できますとも!」

友情あふれる魂は、明るい声で叫びました。
「次の人生であなたと出会って、なにかあなたに『ゆるされる』ことをすればいいのよ。」

「でもどうして?
どうして、そんなことをしてくれるの?」
ちいさな魂はたずねました。

「だってきみはそんなに完璧な存在なのに!
きみの振動がとっても速くて、明るくかがやいているので
まぶしくて見ていられないくらいだよ!
それなにに、その振動を遅くして、
明るい光を重たい闇にかえてしまうなんて。
どうして、そんなことをしようと思うの?
きみは星のあいだでかるがると踊り、
神さまの王国を、思考とおなじ速さで飛びまわっている。
そのきみが、つぎの人生でぼくと出会い、
重くなってわるいことをしてくれるなんて。
どうして?」

「かんたんだわ。」
友情あふれる魂は答えました。

「あなたを愛しているから。」
ちいさな魂はそれをきいてびっくりぎょうてんしたようでした。

「そんなに驚かなくてもいいのに」
友情あふれる魂はいいました。

「あなただって、おなじことをしてくれたのよ。忘れた?
わたしたちはなんどもなんども
いっしょに踊ったじゃないの。
永劫のときをこえ、あらゆる時代をこえて、
わたしたちはいっしょに踊ったわ。
あらゆる時、あらゆる場所で、一緒に遊んだわ。あなたが覚えていないだけ。
だってわたしたちはどちらも、『すべてであるもの』だもの。
わたしたちは上昇であり下降、左であり右なの。
ここでありあそこ、いまであり昔なのよ。
男性であり女性、善であり悪。
そして被害者であり、加害者なんだわ。
だから、わたしたちはこれまでも数えきれないくらい出会ってきた。
そして、相手がほんとうの自分を表現し、体験するための完璧なチャンスを与えあってきたの。」
「だからね」

友情あふれる魂は続けました。
「あなたのつぎの人生では、わたしが『わるいひと』になるわ。
そして、もっともひどいことをする。
そうしたら、あなたは、
『ゆるす』ということを体験できるのよ。」

「でも、どんなことをするの?」
ちいさな魂は、すこし落ち着かない気持ちになりました。

「どんなひどいことなんだろうなあ?」
「そうねえ」
友情あふれる魂は、目をきらきらさせて答えました。
「なにか考えましょうよ。」

それから、友情あふれる魂は、ちょっと真剣な表情になって、
しずかな声でいいました。

「あなたのいうとおりだわ」
「なにが?」
ちいさな魂はたずねました。

「わたしは振動を遅くして重くなり、
『それほどすてきではないもの』にならなくちゃいけない。
自分とはぜんぜんちがうもののふりをするの。
だからひとつだけ、
お返しにおねがいしたいことがあるんだけど・・・。」
友情あふれる魂はいいました。

「なんでもきくよ、なんだって!」
ちいさな魂はさけんで、歌ったり踊ったりしはじめました。
「ぼくはゆるせる。ぼくはゆるせるんだ!」

ところが友情あふれる魂のほうは、
ひっそりと、とてもしずかなのです。

「どうしたの?」
ちいさな魂はききました。

「ぼくはなにをしてあげればいいの?
ぼくを助けてくれるなんて、
きみはほんとうにすてきな天使だね。」

「もちろん、この友情あふれる魂は天使だよ!」

神さまが口をはさみました。
「だれでもみんな天使なんだ!
それをいつも忘れないように。
わたしはきみたちのところへ、
天使のほかには、なにも送ってはいないのだからね。」

そこで、ちいさな魂は、
ますます友情あふれる魂のねがいをかなえてあげたいと思いました。

「ね、ぼくは、なにをしてあげればいいの?」

「わたしがあなたを攻撃し、打ちのめしたとき、思いつくかぎりのひどいことをしたとき、
そのときに・・・」

友情あふれる魂は、口ごもりました。

「うん、そのときに?」
ちいさな魂は、待ちきれなくなっていいました。

「そのときに・・・?」

「ほんとうのわたしを、覚えていてほしいの。」

「覚えているとも!」
ちいさな魂は叫びました。

「約束するよ!いつも、いつまでも、
いまここにいるきみを覚えているって。」
「よかった」

友情あふれる魂はいいました。
「だってね、自分ではないもののふりをするのは、
いったん、ほんとうの自分を忘れなくてはならないのよ。
あなたがほんとうのわたしを覚えていなかったら、
わたしも思い出せなくなるかもしれない。
わたしがほんとうの自分を思い出せなかったら、
あなたまでほんとうの自分を忘れてしまい、ふたりとも迷子になってしまうわ。
そうしたら、だれかべつの魂がやってきて、
ほんとうのわたしたちを思い出させてくれるまで、
迷っていかなければならないでしょう。」

「だいじょうぶ、忘れないよ!」

ちいさな魂はもういちど約束しました。
「きみのことは、けっして忘れない!
贈りものをいつまでも感謝するよ。
ほんとうのぼくを体験するチャンスという贈りものをくれて
ほんとうにありがとう。」

こうして約束ができました。

ちいさな魂は、いさんであたらしい人生に向かいました。

光であること、特別であることに胸をおどらせ、
『ゆるす』という特別なことを体験しようと
わくわくさせながら。

ちいさな魂は『ゆるしてあげる』という体験をしました。

その機会を与えてくれるすべての魂と出会い、その魂が喜びや悲しみをもたらしたとき、
とくに悲しみをもたらしたときいこそ、
いつも神さまの言葉を思い出すのでした。

「いつでも覚えているんだよ。」
神さまは、ほほえみながら言ったのです。


「わたしはきみたちのところへ、
天使のほかには、なにも送ってはいない。」