つらいとは言わなかった

すべてが崩れてしまうような気がしたから

止まらない涙で

枕は濡れて冷たかった

何がつらいのか

何が苦しいのかもわからなかった

あの時の私に

なんと声をかけてやれるのか

今でもわからない

 

逃げられないいばらに縛られて

心全体 体全体血を流していた気がする

自分の若さが嫌いだった

世界が流れていくことが不安だった

置き去りにされて私は

ただ白い骨になる未来しかなかった

たとえいばらの一本でも引きはがして

大丈夫、あなたはまだ生きられると

今の私なら言ってやれるだろうか

あの頃から倍以上生きのびた私なら

 

つまらない昔に囚われていると

あざ笑う人もいるだろう

結局お前は今生きているじゃないかと

けれど生きることはそんなことじゃない

私をあざ笑う人にすら

私は私と同じおもいをしてほしくないのだ

いばらに血を流してほしくないのだ