入院中のちび


父の心臓が不安になった事があり、母が1人だと怖いから泊まってくれと言われたことがあった。


その時父は、これから白内障の手術の準備をしていた頃で、ちびも元気だった。


ちびはとても賢い。


父が退院して、少し体調を崩して通院していた頃、真夜中に父の顔近くでゴロゴロ言ったり、ヒゲで顔を撫でたりしていたそうだ。

また、よく外に出せと訴えて、何度も出ては入っていた。

その度に起こされるのでたまらないと父と母が言っていた。最近になって頻繁にで、仕事があるわけではないので寝不足でも構わないが、どうしたのだと首を傾げていた。


それまで困ったことは一切しなかった子が、突然やり始めた。

後になって考えると、父が息をしているか確認し、外に不穏な何かがあって追い払っていたのかもしれない。



ちびがそんなことをし始めてから2ヶ月後、私が呼び出され、1週間泊まった。

やはり出たり入ったりしている。

時々部屋の中の宙を見つめ、凛々しい顔をしている。


父、母、ちび、私で同じ部屋に布団を敷き、さあ寝ようかとなった時、私が一番最初にうとうとしたようだ。


寝入りばな、耳元で、にゃ!と鳴かれた。


引き戻された私は、

もう何?!寝かせてよ〜

とちびを見て文句を言ったが、ちびは私の頭の横で凛々しい顔をして窓の外を睨んでいる。どうやら

寝てる場合か!

と起こされたようだ。


とはいえ何も起こらず、私が泊まり込んで2日目には、ちびの奇行は止んでいた。

何がどうなったのかよくわからないが、ちびとしては大丈夫になったらしい。



今回も寝入りばなに起こされた。

ちびが入院して、様子を見にきてあげて下さい、と言われ受付にいくと、先生が来るまでちびちゃんと一緒にいてあげて下さいと椅子をすすめられた。


しばらくは、ちびに話しかけたり、撫でたりしていたが、暖かくて少しうとうとしてしまった。


その時、にゃ!と叩き起こされた。

それまで顔を上げたり、動いてもゆっくりだったちびが、私をまっすぐ見ていた。


え?何?また、何かあった?

と聞いてみたが、

おまえ大丈夫か?何だそれ、どうなってんだ?

と厳しい目で私を見たり、私の上の方を見たりしていた。


何かいるの?

と聞くが、わからんわー、みたいな顔をした後、興味ないように丸まってしまった。


この前も寝入りばなだったことを考えると、寝る寸前、魂が抜けていく様を見て、おい!と声をかけたのかもしれない。

と思うのは、引き戻された瞬間とても辛いのだ。

うとうとして目が覚めるのとは全然違っていて、しばらく頭がガンガンし、目が回ったままの感覚があった。


猫はそういうのが見えるのだとしたら、ちびの奇行も私たちのためなのだと思う。

本当に賢くて優しい。