チェリーピッキングバイアスとは、自分の信念や仮説を支持する情報ばかりを選択的に収集し、反証する情報を無視したり軽視したりする認知バイアスの一種です。

 

社会心理学において、このバイアスは確証バイアスの一形態として位置づけられています。確証バイアスとは、人が自分の信念と一致する情報を探し、それを過度に重視する一方で、自分の信念と矛盾する情報を無視したり過小評価したりする傾向を指します。

 

チェリーピッキングバイアスが生じる理由としては以下のようなものが考えられます。

 

1. 認知的不協和の回避:自分の信念と矛盾する情報に直面すると、心理的な不快感(認知的不協和)が生じます。これを避けるために、都合の良い情報だけを選び取ってしまうのです。

 

2. 自尊心の維持:自分の信念が正しいと確認することで、自尊心が高まります。逆に、自分の信念が間違っていると認めることは、自尊心を脅かします。チェリーピッキングは自尊心を守るための心理的防衛策と言えます。

 

3. 情報処理の容易さ:自分の信念と一致する情報は処理が容易で、受け入れやすいです。一方、信念と矛盾する情報の処理には多くの認知的努力が必要とされ、受け入れがたく感じられます。

 

4. 社会的アイデンティティの維持:特定の信念を持つことが、自分の所属する集団の一員としてのアイデンティティを支えている場合、その信念に反する情報を受け入れることは、社会的アイデンティティを脅かすことになります。

 

チェリーピッキングバイアスは、個人の意思決定の質を低下させたり、集団レベルでは偏見や差別の温床となったりする可能性があります。このバイアスを克服するためには、自分の信念と反する情報にも意識的に目を向け、多角的に物事を考える習慣を身につけることが重要です。また、多様な意見交換ができる環境を整えることも有効でしょう。異なる視点からの情報に触れることで、自分の認知の偏りに気づくことができるからです。