大手外資系金融にSecretaryとして入社できた私は、若かったこともあり、周りの人すべてに「私はOOでSecretaryをしています!」と言いたい気持ちだった。
憧れの外資系、そして金融、誰もが知っている大企業、と、当時の若い(キャリア志向ではない)女子からしたら喜びだろう。
ところが、外資系金融でのSecretaryの地位は激しく低かったのだ。
最初に「あれ?」と思ったのは、1歳年上の、(わりと鼻持ちならない)男性とランチをした時。
ランチ時間は情報交換にとても重要、なるべくたくさんの人とランチをして良いところをどんどん吸収する、海外オフィスから誰かが来たら積極的にいろいろなことを聞いてみる、等、いかにも外資系の人、というアドバイスを延々としてくる。
「再来週、本社からOO(偉い人)が来るじゃない?その時ディナーすると思うんだけど、ちょうど僕、法事でどうしても出られないんだよね。欠席なんてすごく残念だな」
と言うので、
「そうなんですか、残念ですね。私は出なきゃダメですよね、立場上」
と言うと、
「別に無理して出なくても大丈夫。ShioriさんはSecretaryっていうexcuse(言い訳)があるから」
と返された。
「?」と思い、胸がなんだかざわざわとした。
Secretaryというexcuseで欠席してもいい?
そして、その意味は、すぐに判明することになる。
その部署は、総勢30名ほど。
タイトルは部長以下、副部長、いわゆる課長、いわゆる課長補佐、肩書のない総合職、一般職、秘書。
肩書のない総合職はだいたい1年目から3年目くらいでProfessional、と言われている。一般職はClerkで、30名中2名しかいない。
そして、Secretaryの私。
その日の午後、部長に呼ばれ、
「再来週、OOが来る時のディナーなんだけど場所を手配してくれる?社内の大きい会議室で、ケータリングでいいから」
と頼まれた。
「出席者は・・・」
と少し考えた後、部長は、
「Professional aboveで」
と軽く言った。
この時の「Professional above(総合職以上)」という響きと、頭を殴られたかのようなショックは何十年も経った今でも忘れない。
要するに、そのディナーに呼ばれないのは、たったの3人。その中に自分も含まれる。
その3人も入れて全員にしたところで3人しか変わらないのだから、金額の問題ではない。
本社から来た人に紹介する価値があるのはProfessional以上の人たちだということだ。
その語、ディナーの手配に気持ちが全く入らなかったのは言うまでもない。
秘書はProfessionalではない。
外資系金融での地位はものすごく低かったのだ。