短期間のうちに意識レベルが大きく変化して、認知機能が低下してしまった状態は、医学的には”せん妄”と呼ばれます。今回は、”せん妄”の特徴的な症状、原因、”せん妄”に類似する疾患、そして”せん妄”の対処法などについて詳しく解説していきます。

 

失見当識は”せん妄”でよく見られる症状の一つ

朝起きた時にそこがどこだか分からず、一瞬パニックになってしまったなんて事は、もしかしたら誰にでも覚えがある事かも知れませんが、この失見当識は、せん妄でよく見られる症状の一つです。

 

少し前まで周りの目には、特に問題なく見えていた人が起こす意識障害。例えば、自分のいる場所が急にどこだか分からなくなってしまったり、今が朝なのか夜なのか区別が付かなくなってしまったり……もしこんな事態になってしまったら、医学的には「せん妄」の可能性もあります。

今回は、この”せん妄”の特徴、原因、鑑別疾患、そして対処法などについて詳しく解説していきます。

 

せん妄の特徴 

せん妄とは耳慣れない言葉かも知れませんが、その意味するところは、数時間ないし数日という短期間で意識レベルが大きく変化してしまい、認知機能が低下してしまった状態です。

例えば、自分がいる場所や時間を認識できないといったことが起こります。これは医学用語で「失見当識」と呼ばれるもので、せん妄でよく見られる症状の一つです。

以下に、せん妄で出現しやすい症状を列挙します。

  • 失見当識
  • 注意能力の低下
  • 記憶障害
  • 意味不明瞭な言動
  • 睡眠障害

こうした”せん妄”の症状は通常、数時間ないし数日の短期間で急速に出現してきます。

 

せん妄の原因 

上記のような”せん妄”の症状は、脳機能が何らかの原因で低下してしまったことを反映しています。せん妄が起こるメカニズムは、完全に解明されていませんが、せん妄の症状に関与する脳内部位は、脳幹内にある網様体と呼ばれる、覚醒と睡眠の調節に携わる部位だと言われています。

 

さらに脳内神経伝達物質の一つである、アセチルコリンの機能低下なども、せん妄に関与していると言われており、せん妄の原因は実にさまざまです。

 

もともと何らかの問題が中枢神経系にあった場合、あるいは腎不全など何か医学的問題で全身状態が悪くなっている場合、さらには、中枢神経系に作用する薬物の中毒症状ないし退薬症状として、せん妄が出現する場合もあります。

例えば、せん妄は時にアルコール依存症の退薬症状として現われることがあります。これは単なる飲み過ぎではなく、アルコールを長期間かつ過剰に摂取し続けた結果、アルコールに対する身体依存が生じます。

 

何らかの要因で、突然アルコールが体に入ってこなくなった時に、心身に出現してくる症状で、いわゆる退薬症状の一つです。特に肝機能低下など、全身状態が悪い時に”せん妄”が出現することがあります。