三つ子の魂、百までの如く、人の性格の多くの部分は小児期に形成されますが、何の記憶もないはずの生後18ヶ月までの期間も、成人後のパーソナリティ障害の原因になる事があります。

 

人の性格を理解する上で重要な口唇期の影響

イライラした時に一服。それが止められにくい理由としては、ニコチン依存の他に、口唇期の名残りも見過ごせません。

 

三つ子の魂、百までと言いますが、人の性格の多くの部分は小児期に形成されます。人の気質には「人見知りしやすい」、「他人に頼りやすい」、「新しい事を試したい」など様々な要素が含まれています。

 

こうした要素が行き過ぎてしまい、日常生活に支障が生じている場合は、パーソナリティ障害の可能性があり、その原因は本人の生まれながらの要因の他、小児期の生育環境も大きな要因になります。

 

物心がつく前の生後18ヶ月の期間である口唇期も、成人後の性格に大きな影響を与えている場合があります。

 

口唇期の特徴

人は生まれてから大人になるまで心身ともに発達していきますが、その過程は、精神医学の大家ジークムント・フロイト(1856~1939)の性的発達段階の理論では、5つの段階からなります。その最初が口唇期であり、生後18ヶ月までの時期を指します。

性的発達段階のそれぞれの段階において、重要なテーマと体の器官があり、人は性的発達段階を一つずつクリアして、心身を成長させていくわけですが、時に、ある段階を上手くクリアできない事があります。

 

心理学の用語では固着といいますが、その段階をクリアできない為に、心の中で葛藤が生じてしまい、成人後の性格へ影響が出てきます。口唇期ではその名の通り、がもっとも重要な体の器官です。

 

生まれたばかりの頃が、成人後の性格に影響を与えるとは意外かもしれませんが、私達の行動にはその頃の名残りが結構うかがえます。

 

例えば、落ち着かなくなるとガムを噛んだり、タバコを咥える人は少なくないですが、こうした口唇の関与する行動がストレス発散に欠かせない人は、口唇期に何らかの葛藤があるのかも知れません。

 

性的発達段階の理論によると、口唇期に固着してしまうと、成人後に口唇期性格が強く現われてきます。次に、口唇期性格の特徴を詳しく解説していきます。

 

口唇期性格の特徴

口唇期である生後18ヶ月までの期間は、自分を世話してくれる人が必須です。生後まもない乳児は自分では何もできず、全面的に他人に依存する必要があると共に、特に親を信頼する事を学びます。

 

乳児は母親の乳を本能的に吸いますが、乳児にとって口唇は生存に必須の器官であると共に、人生で最初の快楽をもたらす器官でもあり、実際におしゃぶりをすると泣き止む乳児は多いものです。

口唇期において、母親が外に出かけっぱなしなどの理由により、乳児の欲求が満たされなくなると、心に葛藤が生じてしまい、口唇期をうまくクリアできなくなります。

 

反対に、乳児への世話が至れり尽くせりで、欲求が過剰に満たされている場合も、口唇期に固着が生じやすくなります。

 

口唇期に固着が生じる、つまり口唇期をうまくクリアできなかった場合、成人後に以下のような口唇期性格が目立ってきます。

  • 他人を頼り過ぎる 
  • 悲観的になりやすい 
  • 他人の批判に敏感である 
  • 他人に攻撃的になりやすい 
  • 他人に不信感を持ちやすい

こうした傾向が強くなり過ぎてしまうと、例えば、他人への依存心が強くなり過ぎてしまう「依存性パーソナリティ障害」では、対人関係など日常生活を送る上で深刻な問題が生じやすく、心理療法を受ける事が望ましくなります。

口唇期を上手くクリアできた人でも、よく注意してみると、口唇期の名残りが少なからずあると思います。例えば、ソフトクリームを舌で味わっている時、何だか幸せな気持ちがしたら、それは人生最初の口唇期に覚えた快楽でもあります。

人は辛い時、その辛さから心を守る為、何らかの防衛機制を取りますが、辛い時に子供っぽくなってしまう事も、退行と呼ばれる防衛機制の一つです。

 

もしも、みなさんの周囲に時々、子供っぽくなってしまう人がいらっしゃれば、どの時期まで退行しているのかも少しチェックしてみましょう。

 

指を口で咥える、爪を噛むなど口唇に関わる子供っぽさが見られたら、口唇期に何らかの葛藤が生じてしまったのかも知れません。