私達の行動は知らず知らず、深層心理に潜む劣等感に影響されていることが少なくありません。

 

劣等感には人生を良い方向にも悪い方向にも向けてしまうパワーがある

誰にでもある劣等感。そのもとは容姿、成績、家庭環境などいろいろ。例えば、「小学校の体育の授業でどうしても跳び箱が飛べなかった」「となりの子はかっこいいオモチャをよく買ってもらっているのに、お母さんは決して買ってくれない」、子供の頃に芽生えた劣等感は、以後、私達の意識につきまといます。

大人になると、多くの人は劣等感とうまく付き合えるようになりますが、この劣等感はなかなかのクセモノ。知らず知らずに私達の生活に影響を与えています。例えば、高級ブランドばかりを愛好し、車はステイタスカーという見栄っ張りの男性。

 

そんな彼の深層意識には、「子供の頃、オモチャを買ってもらえなかった…」といったコンプレックスが潜んでいたりします。今回は、人生を良い方向にも悪い方向にも向けうる、劣等感の持つパワーについて解説していきます。

 

子供の頃の劣等感は思ったよりも根が深い

もともと、劣等感(原語はinferiority complex)は、オーストリアの医師で心理学者のアルフレッド・アドラー(1870~1937)によって作られた言葉です。

 

個人心理学という心理学の分野の創始者ですが、彼は劣等感の重要性を説き、「劣等感は人間が成長していく上で不可欠であり、人の一生のテーマは、子供の頃に身についた劣等感を克服して優越を獲得する事である」としています。

また、米国の著名な心理学者のエリク・エリクソン(1902~1994)によると、「6~12歳の学童期において達成すべき事は、学校に行き、読み書きや計算などの基本的な技術を身に付け、他の生徒達と集団の一員としてうまくやっていく事。

 

これをうまくクリアすると、その子供にはこれから先、人生を頑張っていく自信が生まれ、反対にクリアーできなかったら、その子供には劣等意識が生じる」としています。

このように劣等感のルーツは、子供の頃の体験にあるわけですが、一旦、生じた劣等感をそのままにするのはまずいです。生きていく自信を失ってしまい、生きるのが苦痛になってしまいます。

 

そのため、何とかしようと人はいろいろな行動に出ます。次に劣等感から逃れるために、人はどのような行動に出るのかを解説していきます。

 

劣等感から来る行動

・優越感を感じたい!
劣等感が強ければ強いほど、他人に対して優越感を感じたいという欲求が大きくなり、自分より下と感じた人に対して、見下したような態度を取ってしまいがちです。

 

優越感を得るために、ブランド品などのモノに頼ってしまう場合もあります。また、何にでも精通しているような態度を取ったり、ちょっとした事に口をはさむといった行動の裏には、劣等感があることが多いです

 

・人から認められたい!

「起業して成功する」、「立派な弁護士になる」といった高い目標を立てたり、「メジャーリーガーになる」といったように一つの道を究める。実際、劣等感をバネに大成功を収めた方は少なくありません。

 

例えば、新千円札の野口英世博士。手が不自由だった劣等感をバネとして勉学に励み、立派な学者になられました。しかし、努力を費やす目標が自分に合っていない場合もあります。例えば、画家ではなく、むしろ音楽の方に天分があるのに、「画家になろう」と努力する場合。

 

また、JRの駅名を全部覚えて、駅名のスペシャリストになるといったように、非実用的な目標を立てたりする場合もあります。目標を立てることは良いことですけど、それが自分に本当に合ったものかどうか、時には見直してみるのも良いかもです。

 

・現実逃避

理想の自分を思い描き、空想にふけったり、弱い自分への悩みをまぎらわせるために、テレビのメロドラマをだらだらと観てしまう。生産的な事に費やすべき時間が浪費されてしまいます。例えば、○○様のドラマに夢中の方!現実逃避にはちょっとご注意を。

 

・憧れの人に自分を重ねる

大好きな芸能人、スポーツ選手などに自分を一体化させて、彼らの強さを自分に取り入れます。例えば、オードリー・ヘップバーンのファンの人は、彼女のクールなイメージを知らず知らず心の奥に入れて、深層心理に潜む劣等感に対して武装しているのかもしれません。

 

誰にでもある普通のことなのですが、問題となるケースも稀にあります。例えば、ひいきのサッカー・チームが試合に負けると、怒りを爆発させて暴動を起こすといった場合です。

 

劣等感とうまく付き合うためのヒント

先の見栄っ張りの男性。コンプレックスをバネに一生懸命働いて経済的に成功し、何でも好きな物が買えるようになったのでしょう。

 

しかし、相変わらず過去のコンプレックスを引きずったまま、「お金を儲ける!」という最初の目標に執着してしまったら、いくらお金を稼いでも心は満足できず、家族の心も自分から離れていく……まずいですね。

 

もしも、自分に悩んでいて助けが欲しい時には、精神科(神経科)で相談しましょう。劣等感とうまく付き合っていく基本は、ありのままの自分を受け入れる事でしょう。これが大人になるという事かも知れません。

 

劣等感につきまとわれると、本当に参ってしまいますが、まずは心の緊張を解きましょう。自分はこの世でたった一人しかいないので、大切にして頑張りましょうね。