日常生活上、時に起こり得る不調の一つに性欲の低下があります。性欲減退、セックスレスなどの言葉でしばしば話題になりますが、実はうつ病の場合も性欲の変化は現れやすい症状の一つなのです。性欲減退の原因として考えられる心の病気と注意点を解説していきます。

 

日常生活で時に起こり、時になかなかやっかいな性欲の低下という不調

脳内環境が病的になっている可能性にも配慮が必要です。性生活は多くの人にとって、日々の生活に潤いを与える大切な要素。

 

もちろん、なかには「自分ひとりでも全然寂しくないし、そんなことをしたいとも思わない」と、半ば悟りを開かれたような方もいるかもしれませんが、実際には、多くの人にパートナーがあり、適宜お互いに欲求を満たしていかないと仲が険悪化しやすい傾向にあることは、皆さま、よくご承知の通りです。

 

いわゆるセックスレスの原因は多々あるものですが、実は、心の病気が関係していることもあります。今回は、セックスレスになってしまった場合の見逃しやすい原因の一つ、心の病気について、皆さまに是非知っていただきたいことを詳しく解説していきます。

 

セックスに興味がなくなった? 原因は脳内環境の悪化かも

性生活に限らず何事においても、それに充分な自信を持てないような時は、行動をためらってしまうもの。いつも自信満々の人でも、その気になれない時はあるでしょう。セックスレスの原因は多々あると思います。

 

例えば、心身ともにくたくたに疲れきっているときや、何か心配事が気にかかっているとき。または、相手との喧嘩が多い時期や、相手に慣れ過ぎたいわゆるマンネリ状態で、相手のセクシーな姿を見ても何とも思わない……という場合もあるでしょう。

 

いずれの場合も、気を付けたいのは脳内環境の悪化が考えられるということです。脳内環境を悪化させる要因は様々ですが、代表的なものは日常生活のストレス。職場や学校、あるいは家庭でも、思わずカチンと来るようなことは誰にでもあるものです。

 

ストレスは、うつ病など心の病気のきっかけにもなりやすいことはよく知られていると思います。また、ストレス対策の方法にも注意が必要です。

 

多くの方が自分に合ったストレス解消法を持たれていると思いますが、場合によっては性生活への興味においても逆効果になってしまうものがあります。

 

例えば、飲酒。アルコールは基本的には中枢神経系に作用する薬物の一種。過剰の飲酒を続けると性欲低下につながることがあることは、ぜひ頭に入れておきましょう。

 

性欲の変化はうつ病で現れやすい症状の一つ

うつ病は別名、「心の風邪」と呼ばれるほど、誰でもかかる可能性のある病気。その症状は気持ちの落ち込みだけとは限らず多様です。うつ病で病的になってしまった脳内環境は、全身の生理機能に影響を与えます。

 

睡眠、食欲が変化するだけでなく、性ホルモンを含め、内分泌系にも影響が及びます。性欲の変化も、実はうつ病で現れやすい症状の一つなのです。とはいえ、うつ病の初期症状は、日常的な不調とあまり大差がない場合が多いです。

 

うつ病を見逃さないためには、普段からうつ病へのアンテナを出来るだけ高く張っておく必要があります。もし性欲の低下を自覚されている方は、うつ病の可能性も念のために考慮してみましょう。

 

パートナーの方も、相手に対する不満などの気持ちを持つ前に、是非このようなケースがあること、うつ病も治療で対処可能であることを、理解しておいていただきたいところです。

 

心の病気ではなく体に原因がある場合も……

また、ここではごく簡単に触れるにとどめますが、心の病気だけではなく、身体の病気により性欲が減退することもあります。例えば、甲状腺の機能低下。甲状腺から血中に分泌される甲状腺ホルモンは全身の代謝を調節します。

 

甲状腺の機能が低下すると全身の生理活動はスローダウンしやすくなり、性欲低下も症状の一つとして現れます。さらに一般的な話ですが、病気治療のための薬の中にも、種類によっては中枢神経系や体内の性ホルモンに影響が出やすいものがあるのです。

 

個々人のコンディションによって作用の程度が大きくなる場合があります。例えば、肝機能や腎機能が低下している場合は、治療薬が体内に長くとどまりやすく、副作用が通常より強めに出ることがあります。この場合、性欲の低下などが出現してしまう可能性もあります。

 

もしも何らかの治療薬を服用したことをきっかけに、性欲の低下を覚えたような場合、その治療薬が原因になっている可能性もあります。その際はすぐ、それを処方された医師に相談されてみるのがよいでしょう。

 

長引く性欲減退の自覚がある場合は早めの病院受診を

一時的な過労などで体が動かせないほど疲れきっているときは、性欲がわかないのはしょうがないことです。まずは体をしっかり休ませれば、自然と元の自分に戻れるでしょう。

 

しかし、もしも性欲の低下が数週間以上も持続するようならば、何らかの対処が必要になってきます。例えば、上記で解説したように、うつ病に近くなっていたり、場合によっては身体的な問題が隠れている可能性もあります。

また、場合によっては「俺も、もう年かな……」と、年齢が原因だと考える場合もあるでしょう。実際に加齢に伴う性ホルモンの分泌量の低下で、いわゆる更年期症状も考えられます。人によってこの症状が強く現れることがあります。

上記のように、性欲低下が長引く背景には、うつ病甲状腺機能の低下、あるいは性ホルモンの低下など、さまざまな可能性が考えられます。いずれも精神医学的あるいは医学的対処が可能です。

 

そのような場合、性欲の回復を良好にする最大のポイントは、出来るだけ早期に病院を受診し、必要な治療を開始すること。もしも長引いている悩みがある場合は、相手に対する気持ちの問題だと片付けず、病院受診も是非検討してみてください。