何をするにも気持ちが乗らず、やる気が出ない……。そんな無気力感が続くスランプ状態の場合、うつ病、統合失調症の症状の現れである可能性もあります。気を付けるべき心の病気について解説していきます。

 

何もする気が起きないようなスランプ状態が長引いていたら、心の病気の可能性も考慮してみましょう!

誰にでも、何もしたくないような無気力な気分になることはあるものです。例えば睡眠時間が全然足りず、ひどく疲れているような時は、新しいことを始めるバイタリティは沸かないでしょう。

 

しかし、そんな時はとりあえずしっかりと仮眠でも取れば、元の状態の自分に戻れるもの。でもスランプ状態が、理由もなく幾日も続くような場合、心の健康に赤信号が点っている可能性もあります。場合によっては、心の病気に近くなっていることもあるのです。

バイタリティが低下すると、一時的に無気力・無関心の状態になることもありますが、こうした症状は時に心の病気の症状として現れることもあります。今回は、バイタリティが長期間低下しているような時に気をつけるべき心の病気について、詳しく解説していきます。

 

心の病気とは気付かれにくい無気力状態

やる気が低下していわゆるスランプ状態になってしまうと、日常生活に様々な支障が現れやすくなります。例えば、その時にやるべき事へのモチベーションを維持できなくなることもあります。

 

場合によっては、一日中テレビのスイッチを入れたまま、画面に目をやるわけでもなく、ソファでぼんやりと無為な時間を過ごしてしまうこともあるかも知れません。そんな時は一時的とはいえ、以下のような状態になっている可能性もあります。

  • 情動の表出がかなり制限されている
  • 喜怒哀楽に乏しくなっている
  • 物事に目的意識を持ちにくい
  • 物事に興味を持ちにくい
  • 話をしても、内容が表面的で深みが無い
  • 社会的欲求が低下している

こうした状態が長引けば、日常生活に深刻な支障が生じる可能性もありますが、最初から心の病気を疑われることはあまりないかも知れません。

 

他人の目には「あの人は最近、覇気に欠けている」「話をしても全然おもしろくない」などとネガティブな印象を与えてしまいがちですが、こうした症状が心の病気に関連する可能性には、なかなか気付いてもらえないものです。

 

うつ病、統合失調症……無気力状態は心の病気の症状の一つ

もっとも、こうした不調が一時的なものであれば、心の病気だと問題視する必要ありません。しかしスランプ状態が数週間も持続している場合は、うつ病統合失調症など、心の病気に近くなっている可能性にも注意してください。

まず、うつ病ですが、その名の通り、気持ちの落ち込みが特徴的な症状です。抑うつ症状として、意欲の低下、物事への興味の減退といった精神エネルギーの低下も現れやすいです。

一方、統合失調症は妄想や幻覚といった症状が特徴的ですが、意欲の低下、喜怒哀楽に乏しくなるといった症状も少なくありません。実際、上記に挙げた6つの症状は統合失調症では陰性症状(欠陥症状)と呼ばれています。

 

ここで、陰性(あるいは欠陥)とは、本来、その人に見られていた情動の表出や喜怒哀楽などが欠落している事を指す語です。反対に、本来、その人に元々なかった幻覚や妄想は病気になったために出現したという観点から、陽性症状と呼ばれています。

なお、統合失調症の治療薬は陽性症状ならば、比較的コントロールしやすいのですが、陰性症状に対してはコントロールしにくい傾向があります。

 

もっとも、新しいタイプの治療薬、具体的には複数の神経伝達物質に作用するタイプの治療薬は、統合失調症の陽性症状だけでなく陰性症状にも効果があります。

 

こうした治療薬の陽性症状と陰性症状に対する効果の違いからも、陰性症状は陽性症状とは、その症状が生じるメカニズムはかなり異なっているようです。また、統合失調症の中には陽性症状はそれほどはっきりしないで、陰性症状が主体となっているものもあります。

その他、バイタリティの低下に関連する心の病気として、例えば対人恐怖症では対人状況をおそれるあまり、人と関わり合うような状況を避けやすくなります。場合によっては、「他人に一目おかれたい」といった、社会的欲求の低下につながる可能性もあります。

 

また、もしも、上記で挙げたような症状が、言わば、本人の気質になっているような場合、日常生活で生じている支障のレベルによっては、パーソナリティ障害に近くなっている可能性も出てきます。

 

無気力状態が長引く場合は精神科受診も検討を

もしも、バイタリティの低下の原因が心の病気ならば、出来るだけ早期に精神科(神経科)を受診したいところです。とはいえ、不調が日常的レベルのものなのか、それとも、心の病気のレベルに達しているのか、その境界は少なからず曖昧なものです。

 

一般に、違いの目安は症状の持続期間、症状のレベル、そして日常生活に生じている支障の程度によります。具体的には、もしも症状の持続期間が2週間以上、そして、日常生活上の支障もはっきり現われているような場合は、精神科受診も考慮して頂きたいところです。

なお、本人が無気力状態になっていても、周囲の目には病的なものだと認識されにくいことは、ぜひ心にとどめていただきたいです。特に、もしもご家族の誰かにそうした症状が現れていて、日常生活上の支障が深刻に見える場合。

 

例えば、学校の成績が急低下したり、自分の部屋に引きこもるようになってしまったような場合は、その原因自体は様々でしょうが、場合によっては心の病気の可能性もあることを、是非ご留意下さい。