統合失調症やうつ病の既住歴がある親族がいる場合、それらが遺伝する可能性は高いのでしょうか? 例えば一卵性双生児の片方が統合失調症を発症した場合、もう片方の発症リスクは約5割と言われています。統合失調症、アルツハイマー型認知症、うつ病などを例に、心の病気の遺伝的要因について、詳しく解説していきます。

 

父親と母親をよく知る事は自分自身をよく知る事にもつながる

母親似の子供も父親似の子供も、遺伝子の半分は母親から、残りの半分は父親から受け継ぎます。父親と母親をよく知る事は自分自身をよく知る事にもつながります。

 

「子は親の鏡」という言葉があります。実際、子どもは小さい頃はそれほど自分に似てないような気がしても、成長するにつれ、いつの間に自分そっくりになっていたりします。また、自分が子供だった頃の写真を見返して、今の自分の子供とそっくりのものを見つけて驚かれることもあるでしょう。

ではなぜ、子供は親に似ているのかと問えば、それは、両親の遺伝子を子供が受け継いでいるからです。子供の遺伝子(DNA)の半分は母親から、残りの半分は父親から受け継ぎ、遺伝子は体の設計図

 

その遺伝情報によっては、時に何らかの病気の原因になる可能性もあります。遺伝的要因は心の病気でも、重要な発症要因の一つです。今回は、心の病気の遺伝的側面を詳しく解説いたします。

 

遺伝情報が近いほど、引き継ぐ可能性が高くなる遺伝的要因

心の病気は、一般に生物学的、社会環境的、そして心理的要因などの複数の要因が、ネガティブな方向に相互作用した結果として発症します。

 

遺伝的要因は生物学的要因として最重要。心の病気は中枢神経系の何らかの不調を反映したものです。遺伝子は人体の設計図であり、中枢神経系の構造も遺伝子に記された遺伝情報に基づいています。

もしも、遺伝子の一部に通常とは異なる何らかの変異があれば、それはその人の個性と見ることもできますが、場合によっては、心の病気の発症と関連深いものもあります。

 

例えば、脳内神経伝達物質の機能に何らかの支障を及ぼす可能性がある変異ならば、心の病気のリスクを高める要素になります。

実際に、心の病気は一般に、家族の誰かが発症した場合、その人の親族、言い換えれば、その人に遺伝情報が近い人ほど、同じ心の病気のリスクが高くなる傾向があります。

 

親の統合失調症が子に遺伝する確率は何%?

例として、統合失調症など、発症率が1%前後の心の病気の遺伝的リスクを考えてみましょう。仮に、ある男性が20代後半で、統合失調症を発症したとして、その男性に何らかの遺伝的リスクがあったとします。

 

ここで、ご留意いただきたい事は、心の病気は脳内に生じている不調のメカニズムに対して診断されているわけでなく、基本的には精神症状を分析することで診断されるということです。

 

したがって、脳内に生じている不調のメカニズム自体は別々でも、現われている精神症状が、その病気と診断できるものであれば、その病気であると診断されます。

そこで、ここでは仮に、その男性の遺伝的要因が、それがもたらす脳内の不調のため、発症リスクが通常より10倍高まると仮定しましょう。

 

通常の発症率は1%ですので、それが10倍になれば、発症率は10%です。次に、その男性に、親兄弟、従妹などを含めて、血縁者が20名いたとします。

 

通常ならば、この20名のなかで、その病気を発症する人はいないでしょうが、仮に、この20名がみな、その男性の遺伝的要因を持っていたとすれば、その20名の中で、この男性と同じ病気を発症する人は20名の1割なので、2名程度と考えられます。