日常生活に支障が大きくなっていたら、恐怖症の可能性も

もっとも、精神分析の結果、恐怖心のルーツが父親であることが分かったとしても、それに遭遇する可能性がほとんど無い場合は、特に対処の必要はないでしょう。しかし、もしも苦手意識を持つ対象が日常的なものの場合、深刻な悪影響が生じる可能性もあります。

たとえば飛行機が苦手な場合、飛行機に乗らないと仕事に深刻な支障が生じるビジネスマンであれば、乗っている自分を想像しただけで身震いするほど、飛行機に乗る事を怖がっていたら、恐怖症のレベルに近くなっている可能性もあります。

 

また場合によっては、対人状況で不安感が強い、いわゆる対人恐怖症のケースもあるでしょう。人と接する事をなるべく避けてしまうほど、対人恐怖が強まれば、日常生活上、深刻な支障が生じてくる可能性もあります。

このように動物、乗り物、対人状況など、さまざまな対象や状況が恐怖の対象となる恐怖症は実は頻度の高い心の病気の一つ。また、恐怖を感じるほど苦手なものが日常的にある事自体、大きなストレスになりやすく、アルコール依存症うつ病などの引き金になる可能性もあります。

 

恐怖症はそれ自体による精神科(神経科)受診は少ないのですが、もしも自分でも不合理と思えるほど強い恐怖の対象があり、またそのため日常生活上、深刻な悪影響が生じている場合は、精神科(神経科)で相談してみる事もご検討してみてください。

 

克服したいものがあれば一歩一歩、克服していきましょう!

一般に苦手なものは、あえてそれに接して慣れていく事が、その苦手意識を克服するための基本でしょう。20歳の頃、対人状況に苦手感が強かった人が、30歳を迎えた頃には、他人とコミュニケーションを取るのが大変上手になっている場合もあるかと思います。

 

例えば、同窓会で久しぶりに、かつてのクラスメートに再会すると、その彼は営業職につき、コミュニケ―ション能力を日々磨いたせいか、学生時代のすごく内気だった頃とは人が変わってしまったかのような印象を受けてしまった……。

彼のように苦手な状況を場数を踏む事で克服する事は、「若い頃の苦労は買ってでもせよ」という、時に耳にするような言葉につながるかも知れません。実際、恐怖症の治療でも、苦手な対象や状況に対しては、段階的ではあるものの、あえてそれに接する事が、恐怖心を克服するためのいわば原理とも言えます。

対人状況を苦手とする場合、それを克服する事で得られるメリットは明らかに大きいでしょう。何らかの対象や状況に対する苦手意識を克服したい気持ちがある場合、積極的に場数を踏む機会を作っていく事は是非、検討したいところです。

実際、苦手意識を克服するという事は、人によっては、アクションを起こす原動力。上記の例にもあげた、学生時代に内気だった彼の場合、その内気さを克服すべく、あえて、人と多く接する営業職についた可能性もあるのではないでしょうか。

 

また、高い所が非常に苦手だった人が、その恐怖心を克服したい気持ちが、ロック・クライミングなど、人によっては尻込みしそうな、高所に挑むスポーツをするきっかけになったケースもあるようです。

最後に、対人状況などへの苦手意識から心の苦悩が大きくなっている場合、カウンセリング・ルームなどでカウンセラーに相談してみる事も、状況を良い方向へ向ける第一歩になるかも知れません。

 

また、苦手な対象や状況に接するたびに強い不安反応が生じるようになっていて、日常生活上の支障も大きくなっている場合は精神科的治療が望ましい恐怖症のレベルに近くなっている可能性もある事もどうか、ご留意ください。