自分が自分ではないような感覚を覚える事は時に誰にでもあります。この「離人感」が顕著になれば、解離性障害にあたる可能性もあります。今回は離人感に関連する心の病気も含め、詳しく解説していきます。

 

心が体から離れ、少し高い位置から自分自身を見ている……といった離人感

心身が疲れきった時など、日常でも現われ得る現象です。しかしそれが深刻化した場合、解離性障害にあたる可能性もあります。

 

家でピアノを弾いていた時、あたかも自分ではない誰かの演奏を聞いている感覚がした…。自分が自分ではないような「離人感」は、程度の差はあれ日常時おり現われ得る現象です。

今回は、離人症の形態や原因、そして対処法を詳しく解説していきます。

 

離人感が持続する際は医学的な問題がある可能性も!

「心が体から離れ、少し離れた位置から自分自身を見ている」「自分が今、そこにいる事があたかも映画の一場面のように感じる」

毎日のストレスが強く、心身が疲れ果てていた時、自分の体が自分ではないような違和感を覚える事もあるかもしれません。

離人感が深刻化した場合、医学的な問題を抱えていたり、アルコールなど中枢神経に作用する薬物が関与している可能性があります。

 

てんかん片頭痛、あるいは頭部外傷などの後、一時的に現実感が低下する場合があるのです。また、心理的ショックは離人感のよくある原因の一つです。

 

例えば、彼女あるいは彼氏から唐突に別れを告げられた時は、ショックのあまりしばらく口から何も言葉が出ないかもしれません。そんな時は自分が自分ではないような気がするものです。

 

これには実は失恋のショックに心が打ちのめされないように、脳が現実感を低下させて心の防御を行なっているという心理学的な側面もあります。 

離人感はこのようにさまざまな状況で現われるもので、精神症状の中では抑うつ症状や不安症状の次に現われやすい症状になっています。

 

離人感は「解離症状」の一形態

離人感は精神医学的には解離症状の一形態です。解離症状の「解離」とは、日常的には我を忘れてボーっとしたような状態を指します。実は誰でも時にそういった状態があるもので、日常的な「解離」は精神医学的に問題視するようなものではありません。

 

ただ、「解離」が非常に深刻になれば、稀ではありますが自分の記憶がない間に他の人格が現われている、いわゆる多重人格が生じる可能性もあります。

離人感は解離性障害では最も現われやすい症状の一つです。解離性障害は一般に稀な疾患だと考えられていますが、程度の差を除けば、症状の1つ1つはごく日常的な現象です。

 

そのため症状がかなり顕著にならない限り、解離性障害の頻度は一般に過小評価されやすい傾向があります。なお、解離性障害の一形態としての離人症は、女性が男性の約2~4倍多いとされています。

 

離人感が長引く場合は病院受診も考慮してみて!

離人感がもし深刻化した場合、生活で何らかの問題が現われやすくなります。目先の事には集中できず、会話が成り立たなかったり、作業ができなかったり、家族や友人との関係にも何かしら問題が現れるかもしれません。

離人感への対処法は、その原因がてんかんや片頭痛、あるいは頭部外傷などはっきりしている場合、その原因疾患を治療する事が離人感への基本的な対処になります。 

 

原因がこれらの医学的な問題や薬物などでもない場合、心の病気の可能性が高く、解離性障害はその典型的なものです。

解離性障害の一形態としての離人症は、10代から20代の若い年代で発症する事が多く、それ以外の年代ではあまり発症しません。

 

離人症は「身近な人が亡くなった」「交通事故にあった」「暴力など虐待を受けていた」など、幼少時の深刻なトラウマ体験が関係していることが多いです。

離人症の基本的な治療法は心理療法で、個人個人の病状に応じて抗うつ薬など薬物療法なども行われます。

実際にもし離人感を何度も覚えるようになっていて、生活上、何らかの問題が現われてきた場合、上記のようなさまざまな原因が考えられます。専門家に相談される事もどうかご考慮してみてください。