怖い夢、嫌な夢が続く…悪夢にうなされてしまうということは、何らかの心の不調が反映されている可能性があります。睡眠に関する生理学的な基礎知識と共に、悪夢の原因と対処法、そして悪夢に関連する心の病気について、詳しく解説していきます。

 

ぐっすり眠れるストレス対策

幸せな夢を見る事もあれば、時には悪夢にうなされる事もあるかも知れません。もしも最近、頻繁に悪夢を見るようなら、まずはぐっすり眠れるようにストレス対策を見直していきましょう!

 

科学的な真偽とは別に、夢が未来を何らかの形で予知したり反映したりするという考えは、古くからあったようです。

 

例えば正月の初夢に富士山を見れば縁起がよく、よい一年になると考えられていますし、逆に悪い初夢を見てしまったら、その年はしっかり気を引き締めた方が良いと考える人もいるかも知れません。

なかには夢はほとんど見ないという言う人もいるでしょう。また、夢を食べるという伝説の動物・バクの話を思い浮かべ、怖い夢に悩んでいるときには「バクが食べてくれればいいのに!」と考える人もいるかも知れません。

そもそも怖い夢というものは、多くは子どもが見るものです。小さい子どもが母親に「お母さん、怖い夢を見たよ」と訴える事はよくあります。しかし、大人になれば夢自体をだんだん見なくなる傾向があり、悪夢なんてそう滅多に見るものではなくなる傾向があります。

 

もし突然悪夢にうなされるようになった場合、何らかの精神的不調を反映している可能性があります。今回は、そうした人におすすめしたい心のケア法、そして気を付けておきたい心の病気も詳しく解説していきます。

 

夢はレム睡眠時に見るもの

睡眠は大まかにレム睡眠ノンレム睡眠の2つから成っています。レム睡眠とは簡単に言えば、体は休息を取っていても、脳はある程度覚醒している状態で、夢を見るのもこのレム睡眠中です。

 

もしも誰かと一緒に寝ている人なら、相手がレム睡眠中に夢にうなされていたり、時には寝言を言っていた事もあったと思います。

 

また、まれではありますが、いわゆる夢遊病で、突然ベッドから起き上がり、そのままふらふら歩いて行ってしまうような事も起こり得ます。

そのほかレム睡眠中に起こる特徴的な生理的現象としては、眼球が上下あるいは左右に素早く動く事があります。実際、レム睡眠のレム(REM)とは、素早い眼球運動(rapid eye movement)を略したものです。

一方、ノンレム睡眠のノン(non)とは、「○○ではない」という語で、ノンレム睡眠とは単純にレム睡眠以外の睡眠という意味合いです。

 

このノンレム睡眠はレム睡眠より眠りが深い、つまり身体だけでなく、脳も充分、休息を取っている状態で、それを反映して脳波にはゆっくりした波形が多くなってきます。

通常、一回の睡眠中、レム睡眠とノンレム睡眠は交互に計4~5セット出現します。もしも目覚めた時、それまで見ていた夢をまざまざと覚えていたら、目覚める直前、レム睡眠だった事が分かります。

 

身も心も痛んでいるから悪夢を見てしまう?

では悪夢を見る原因には何があるのでしょうか? 睡眠中のレム睡眠時に、なぜ脳は素敵な誰かと一緒に過ごしているような幸せな夢ではなく、本人を震え上がらせるような悪夢を作り出してしまったのでしょうか?

 

その大きな原因は何と言っても日常生活上のストレスです。近頃の社会環境は一昔前が牧歌的に思えてしまうほど、それは厳しいものだと思います。

 

誰でも何かしら厄介な問題を抱えているものです。例えば職場の人間関係がギスギスし過ぎていたり、苦手な上司や同僚の声を聞いただけでイライラしてしまう…という人も少なくないと思います。

 

誰かに思いっきり愚痴をこぼして気持ちをすっきりさせたいところですが、あいにくそんな相手はおらず、仕事のノルマだけは増える一方…というのもよくある話です。

このような日常的なストレスを抱えている場合、夜の睡眠が浅くなるだけでなく、その眠りが浅いレム睡眠中に脳は本人の痛んだ心をなぐさめてくれず、なぜか悪夢を作り出してしまったりします。

例えばガイド自身の悪夢で恐縮ですが、自分の車をどこへ停めたのか完全に忘れてしまい、まさか盗まれたのではないかと、うろたえながら、ショッピングモールの巨大な駐車場をひたすら歩き回っているうちに、しまいには半ばパニック状態になっていたなどという過去の体験が夢に出てきたりするのです。

 

PTSD? 震災や事故などのトラウマ体験も悪夢の原因

もちろん悪夢を見たからと言って、その大部分は心の病気の症状ではありません。心の病気の患者さんが、「先生、昨晩、怖い夢を見たよ」などと、悪夢を訴える事はしばしばありますが、それが心の病気自体と直接的に関連しているのかどうかは微妙な問題です。

 

それでも心の病気のなかには悪夢がその特徴的な症状であるものがあり、その代表的なものにPTSD(心的外傷後ストレス障害)があります。

PTSDは戦争や自然災害など、生死の狭間をさまよったような過酷な体験後、しばらく時期をおいてから現われてくる心的後遺症です。

 

その特徴的な症状は、その恐怖体験が悪夢やフラッシュバックといった形でよみがえってくる事です。一般にPTSDから回復するためには精神科での治療が不可欠です。

 

もしもその時の悪夢に何度もうなされるようになっていましたら是非、精神科(神経科)受診もご考慮ください。

 

悪夢を防ぐには、まずは眠りを深くする工夫を!

一般的な悪夢対策としてまず、悪夢に限らず夢は眠りが浅いレム睡眠中に見る事に着目します。もしも全体的に眠りが深くなれば、脳は夢を作ったりなどせず休息してくれる事になります。

 

まずはぐっすり眠れるように工夫したいところです。試したい手段としては例えば、「枕を替えてみる」などは、よく言われますが、ガイドが特におすすめしたいのは運動、特に有酸素運動です。

 

例えば電車通勤の方なら、ひと駅前で降りて早足で家まで帰ってみる、あるいはジムに寄って、しっかり汗を流す、さらには、パートナーのいる人は、眠る前に二人でしっかり有酸素運動……など。

 

個人個人に適した有酸素運動で快楽物質のエンドルフィンを脳内に分泌させ、いわゆるランナーズ・ハイを覚えればストレス発散になるだけでなく、体にも心地よい疲労感が残り、熟睡への手助けになるはずです。

もしも深刻な悩み事を抱えているような場合、それを心の中に秘めておくのは、心の健康にはNGです。その苦悩は不合理なほど心の中で強まる傾向があります。

 

誰か信頼できる人に話してみる事をおすすめします。それまで見落としていた解決策に気付く可能性があるだけで無く、その苦悩を心の外へ押し出す事で、心がずっと軽くなる事は是非、頭に入れておいて下さい。

悪夢にお困りの方はアルコールや中枢神経系に作用する治療薬には要注意です。例えば、「晩酌すると、すぐ眠れる!」と、言う方もいらっしゃると思いますが、実は、アルコールは眠りの質を浅くする作用があり、悪夢にうなされている方は、アルコールはパスしておくのが望ましいです。

 

また何かの治療薬を飲み始めてから悪夢を見始めた人は是非、その治療薬を処方された医師にご相談ください。

最後に、ぐっすり眠れるようにいろいろ工夫してみたものの、どうしても悪夢を見続けてしまう場合、悪夢障害と呼ばれる病気の可能性もあります。その際は是非、精神科(神経科)あるいは睡眠外来などでご相談される事をおすすめします。