心の病気は一般の身体疾患と比べて、まわりに病気になったことを言いにくい傾向があります。それには個人のいろいろな要因が関与しますが、もしそれを誰にも分からないようにしている……といったような場合、それが原因で事態が悪化してしまう可能性もあります。

 

心の病気になった時に、それを誰かに言っておいたほうが良い理由

 

心の病気は他の病気と比べて、まわりにあまり相談しにくい傾向があります。それには病気のイメージも少なからず関与しているのでしょう。

 

しかし、病気になったことをまわりの誰にも言わないとなると、場合によってはそのために事態がより深刻になる可能性もあります。

 

心の病気は医学的な問題が脳内に生じている状態

 

少しずつ正しい認知は広がっていますが、心の病気は身体的な病気と比べて、まだ一般的にイメージが良いとは言えません。

 

もし、病気であることを言えば、相手の態度が変わるのではないか……といった心配から、なかなか簡単には言えないこともあるでしょう。

うつ病や統合失調症など心の病気も一般的な身体疾患と同列の医学的問題だという認識が、社会全体にあまり根付いていないことも大きいでしょう。

 

場合によっては、病気になったのは本人に何らかの落ち度があったためだと、まわりの誰かに誤解されている場合もあるかもしれません。

私たちが心の病気に関して絶対に押さえておくべきことは、心の病気は脳内の神経生理学的な不調が原因で生じている、医学的な問題だということです。

 

それは本人の生物学的要因とともに心理的な要因社会環境的な要因などが悪い方向に複合的に作用した結果だと考えられています。

心の病気の原因である脳内の不調には、脳内神経伝達物質などが関与しています。それは基本的には、アレルギー疾患などの一般的な身体疾患の原因と同列で議論できるような生物学的な内容です。

 

病気を隠そうとすることが孤立感を深める可能性も

 

うつ病や統合失調症などの心の病気は一般にできるだけ早い段階で治療を開始し、その治療内容を順守していくことが、病気から良好に回復していくために最も大切な要素です。

しかし、この原則を患者さんが守っていくうえで、時に困難が生じてしまうこともあります。

 

まず、治療に要する期間に数カ月、場合によっては数年間が必要になるなど、治療期間が病状に応じて長期化しやすいことは大きな要因です。

治療を続けていくうえで、家族や親しい友人たちは心の支えになる存在です。しかし、家族や友人たちは、患者さんがいかなる事態に直面しているかをはっきり認識していなければ、サポートしたくてもできません。

 

具体的には、本人が知らないでいる何らかの社会的支援を受けられるように手助けができる状況でも、それができなくなってしまうかもしれません。

病気になったことを隠そうとすれば、社会的な交流を避ける方向に向かってしまう可能性もあります。

 

それは孤立感や孤独感を深め、精神症状の悪化につながりやすく、場合によっては、治療を続けていく過程で精神的に追い詰められてしまう可能性もあります。

 

特定の誰かには黙っておいた方が良い場合も

 

病気になったことを言っておきたい相手は、ご家族や親しい友人たちなど、患者さんが大切にしている誰かになるでしょう。

 

初めて誰かに教える時は、かなり勇気がいるかもしれませんが、打ち明けられた相手は通常は心配の念や、優しい気持ちを示すものです。

 

同時に、その相手に病気になったことを教えたことで、自分がそれまで隠してきたことから来るストレスからも解放されます。

もちろん、病気になったことは特定の誰かには言わないでおいた方が良い場合もあるでしょう。

 

病気になった事を誰に教えて、誰に言わないでおくかは、基本的には事態が良い方向に向かうか否かを慎重に検討したうえで、患者さん自身が下す決断です。

 

もしそれが自分ではなかなか難しい時は、主治医に相談してみる事も良いと思います。

今回は、病気になったことを隠すデメリットを詳しく解説しましたが、病気になったことを隠したい時は、病気になった自分を認めたくない気持ちも関連している可能性があります。

 

それは、病気の発症時に、精神科(神経科)受診をためらう原因にもなるものです。

こうした気持ちが強くなる背景には、前述したように、心の病気が脳内の医学的な問題が原因で生じた病気であるという認識が不足している可能性もあります。

 

どうか、このことは皆さま、頭にしっかり置いておいてください。