早めの治療が大切な心の病気。治療には、薬物療法や心理療法の他、光療法や電気けいれん療法が使われることもあります。心の病気の治療法について、詳しく説明していきます。

 

心の病気にはどのような治療法があるの?

 

自分には心の病気は無縁と思っている人も多いようですが、心の病気は誰でもなり得る病気です。例えば、うつ病は風邪のように誰にでも起こり得る、ありふれた病気であると言う意味合いで、「心の風邪」と言う別名があるほどです。

こうした心の病気は一般に自然治癒は期待しにくく、放っておくとどんどん悪くなってしまう傾向があります。例えば、うつ病は早い段階で治療を受ければ比較的容易に回復する事ができますが、未治療のまま放っておくと、自殺のリスクがある深刻な状態にもなってしまいます。

 

軽度の心の不調の場合

 

病院に行くほどではない軽度の心の不調の場合、生活リズムや食生活の見直しなど、自分でできることで改善することもあります。

 

あくまでも重度でない場合ですが、起床時間を決めて朝日を浴びたり、心が軽くなる本を読んだり、仕事に打ち込んでみたりと、症状に併せてセルフマネジメント法を試してみるのも有効です。

ストレスが原因の心の不調の場合は、「ストレス発散・解消法」「ストレスフリーの思考術」で紹介されている方法を試すのもよいでしょう。

 

薬物療法・心理療法・光療法・電気けいれん療法

 

自分で対応するのが少し辛いと感じられる場合は、病院での治療を早期に考えましょう。心の病気の基本的な治療法は「薬物療法」「心理療法」「両方を組み合わせたもの」の3つにわけられます。

 

さっそく病院での治療を検討されている人は、「精神科・カウンセリング・催眠療法」をご覧下さい。以下では、各治療法の基本を解説します。

 

◆薬物療法
心の病気の薬物療法では脳に作用する薬物が用いられます。心の病気が生じるまでの厳密なメカニズムはまだはっきりしていないのですが、心の病気と脳内の神経伝達物質の機能異常との間には密接な関係がある事がわかっています。

 

薬物療法の主要な目的は、神経伝達物質の働きに生じている問題を元に戻す事ですが、薬物療法が心の病気の治療に大変、有効である事自体、心の病気の発生に脳内の神経伝達物質の乱れが深く関連している事の証拠でもあります。

治療薬としては、抗不安薬、抗うつ薬、抗精神病薬などがあり、抗不安薬、抗うつ薬はその名の通り、それぞれ、不安を軽減させる、うつを軽減させる薬です。

 

不安を軽減すると言う事は心の緊張を軽くし、気持ちをリラックスできる事になるので、睡眠薬としても使われます。

 

アルコールも脳をリラックスさせるので、一種の抗不安薬と見る事もできますが、抗不安薬とアルコールを同時に摂取する事は大変危険である事は、是非知っておいて欲しい事です。

抗不安薬とアルコールは両者とも脳機能を抑制するのですが、相互作用を通じて、両者の効果が増強し合ってしまい、その程度によっては、呼吸停止、血圧低下などから命を落としてしまう危険もあります。

 

一方、抗精神病薬は幻覚、妄想など、現実と非現実の境界がぼやけた為に生じる症状に対して用いられます。

治療薬は脳内の神経伝達系に主に働くように作られているのですが、神経系は脳に限らず、末梢神経、例えば、胃腸の働きを調整する神経など全身に分布してるので、場合によっては、胃部不快感など好ましくない副作用が出現する事があります。

 

新しく開発された治療薬ほど、脳内の神経伝達系により選択的に働くようになっていて、高い治療効果と少ない副作用が期待できます。

 

ただ、副作用の発現には個人差が大きく、また、どの治療薬がその人に合っているか、所謂、治療薬との相性があるので、治療薬は本人に合わせて調整する必要があります。

 

精神病の薬についてもっと詳しく知りたい方は、「抗うつ剤・抗不安薬・向精神薬・精神安定剤」に詳しくまとめています。

◆心理療法・カウンセリング
私達は何か悩み事がある時、自分の事を気遣ってくれて、自分の話に真摯に耳を傾けてくれる人がいることで、心の緊張をかなり軽減することができます。

 

悩み事を他人に話した後、心がすっきりした経験がある人は多いのではないでしょうか。話す事はそれ自体、心の健康を維持する上で重要な手段となるばかりか、以前に受けた心の傷を癒す助けとなります。

 

その為、医師やカウンセリング・ルームでカウンセラーと話す事自体、気持ちが楽になる事につながりますが、心の病気が悪化する原因のひとつとして、その人の思考に悪いパターンが潜んでいる事が少なくなく、本人はなかなかそれに気付きにくいものです。

 

心理療法の認知行動療法などを通じて、悪い思考パターンをより健全な思考パターンに置き換えて、現実生活への適応を良くするように訓練を受ける事は心の病気の症状を改善させる上で大きな効果があります。

◆その他の治療法
その他の治療法として、日照時間が短い冬季に気持ちが落ち込んでしまう、冬季うつ病に対して効果的である光療法や、薬物療法の治療効果があまり認められない場合などで行われる、電気けいれん療法などがあります。