近年はAIの影響が人間の対局にも著しく出ている。
関係ないが、将棋の話で出てくる『人間』が含まれる言葉にとてつもなく抵抗を感じる。
AIと人間しか将棋は指さないのだから、使うのは仕方のないことなのだが……自分にとってAIとはあくまで勉強法の一つというカテゴリでしかないし、人間が下に見られている気がしてならないのだ、作ったのは人間なのに。
それに、アマチュアが『研究』と言う言葉にも違和感を覚える。
ただAIが示した順を、実戦で使い、それを研究というのは些か疑問である。
ただ、もうそれが当たり前となってきているので、自分が古き人間で敏感なだけかもしれない。
話が逸れてしまった。
今回はゴキゲン中飛車衰退についてと何故勝てないかの手順の基本図、一例として美濃囲いを取り上げたいと思う。
それにしても、今の子供に10年前は振り飛車ならゴキゲン中飛車が一番有力と話したら信じてくれるのだろうか。
10年前と言えば、自分がまだ中学生の時で、奨励会を目指し四間飛車を指していた。
四間飛車には居飛車穴熊を組むと言うのがこの頃の常識で、四間飛車の勝率が思わしくなかった。3~4割だったと記憶している。
頼りの藤井システムすら後手では奮わなかったようだ。
奨励会試験は1回目というのもあって、受かる気はしていたものの、1勝3敗であえなく一次予選通過ならず、この頃は4勝通過3敗失格というかなり厳しい時代だった。
落ちた原因は分かっていた、明らかに指せる戦法が少なかった。
なので、2回目の奨励会までに早石田とゴキゲン中飛車を覚える(早石田も、7四歩という新手が出て勝率が5割を超えていた気がする)。
これは2回目も2勝3敗で失格と、実力不足なので仕方ないのだが、悔しくて仕方がなかったのは別のお話。
ともかく、今まで指していた戦法である四間飛車を辞めて他の戦法を指さないと勝てない時代だった。
今はどうだろうか。
居飛車が振り飛車より優秀とは言わない、しかし四間飛車と三間飛車が勢いを取り戻し、5割越えとは行かないが、様々な指し方によって居飛車相手に善戦している。
しかしゴキゲン中飛車、10年前にはなかった超速によって虐げられている。
AIの発達によって、ゴキゲン中飛車が超速で容易に作戦勝ちになることがわかってしまったのだ。
確かに、振り飛車において、評価値-スタートはデフォルトで、四間飛車や三間飛車でも-に殆どなる。
だが、ゴキゲン中飛車だけ明らかにおかしく、例えば銀対抗の初期値は-300以上振れて先手有利になる。
有利はいくら何でもおかしいはずなのだが、後手にも思わしい順が見つからない。
ともかく並べていこう。
初手から
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲4八銀 △5五歩 ▲6八玉 △3三角 ▲3六歩 △4二銀
▲3七銀 △5三銀 ▲4六銀 △4四銀 ▲7八銀 △6二玉
▲7七銀 △7二玉 ▲6六銀 △8二玉 ▲5八金右 △7二銀
▲7八玉 △9四歩 ▲9六歩(基本図)
ここまでを基本図とする。
尚、後手から端歩を突かない手も存在する、これは端歩を突いている暇がないとの読みなのだろうか。
ただ自分のPCスペックでは端歩を指す手は省いておいた方がいいのでご了承願う。
この形から、後手が指すとすれば5一飛、3二金(5一飛と組み合わせることが多いため省略する)、6四歩、5六歩だろうか。
だが既に2億ノード以上読んで-330程度、こうなってしまう原因を上記で挙げた候補手から順に調べていく。
後手5一飛(3二金)の場合
△5一飛 ▲3七桂 △3二金 ▲2九飛 △6四歩 ▲6八金寄 △2二角 ▲2四歩 △同歩 ▲同飛 △2三歩 ▲2九飛 △6三銀
5一飛から3二金、ここの手順前後でも3七桂は跳ぶべきなのでさほど変わらないと思う。
それにしても3二金までの形は振り飛車側が美しい、しかし互角かというと別の話。
2九飛は将来1五角と出て3七に成られる筋を先受けした手で、これを指しておけばその時に別の手を指せる意、後手の2二角は4五桂の先受けで、これに4五桂だと、3三桂から桂交換する手があり、これなら振り飛車も不満はないだろう。
それにしても短い間に先受けの手が2回も出るとは難しい。
とは言え歩が交換できるようになったので、居飛車も歩を交換しておき手を渡す、一手パスのように思えるかも知れないが、先手は7七角と将来の7六桂を備えたり端にも利いている手もあれば、7七銀から穴熊にするなど(但し、AIが示しているだけで実戦で出るとは思えない)指したい手が多い。
後手としても囲いを発展させるべく6三銀と自然な手を指すが……。
▲5五銀左 △同銀 ▲同銀 △4八銀 ▲4五桂 △5五角 ▲同角 △同飛 ▲4一角① △5二銀 ▲3二角成 △5七銀 ▲4六銀まで
大胆に銀損の攻めを敢行する。
同銀、同銀、同角には同角、同飛に4一角と鋭い両取りが飛んでくる、この仕掛けが成立するのは6三銀と離れ駒が出来たからで、同角に代えて同飛は4一銀と筋悪く攻めて、飛成が受けにくい。
仕方がないので4八銀と、桂を狙いつつ5七の地点に駒を利かせる手だが、本譜と別に4六銀打も考えられる、掲載はしないが、有力ではあるので興味があれば調べてみて欲しい。
機が熟したところで5五角を敢行し、狙いの4一角を決め、3二の駒を取らせて5七銀と攻め合うが、一旦4六銀を受けて結果図。
4六銀は同銀成、同歩で一見意味のない手に思えるが、桂をただで取られないようにしている、細かい利かしだ。
難しいがこれは先手良しで、以下5七の地点を執拗に迫られる攻めには、活躍の見込みがない馬を2二に動かして合駒を強制させる、角なら同馬~7七角で飛を狙う感じだ。
桂を後手よりも使えている先手と玉が一路深い後手だが、自分なら先手良しで納得する。
①4一角より
△5七銀不成 ▲6三角成 △6八銀成 ▲同金 △5七銀 ▲4六銀 △同成銀 ▲5三桂不成 △7二金 ▲6四馬まで
こちらは後手が両取りを受けなかった順だ。
一応先手良しなのだが、先程よりも難しいか。
AIは次善手と捉えていた手なのだが……
4六銀に同成銀を取らないのが感心の手で、6四馬までが結果図。
後手は5六成銀の一手で、これもまたいい手だ。
先手も6一銀や6一桂成から寄せることになるか。
ただ次の5六成銀を指せるなら、上手く中飛車を捌ける人というイメージだ。
長くなったので他の候補手は次回にするが、今のところプロでゴキゲン中飛車銀対抗が減ったのは、こういった先手良しをしっかり勝ちに結びつけられるからではないかと思う。
しかし自分的に見たら、良いにしてもまだまだ難しそうなので、考えを少し改めることになりそうだ。



