✐ずっと二人で | 愛の詩

✐ずっと二人で


ドアを開けると「カランカラン」と音がして「いらっしゃいませ」とバーテンダーの声が響いた。
「翔さん今夜は早いね」
「ん、客送っていったからさ」
「何しますか?」「さっぱりしたの飲みたいからレモンサワーもらおうかな」「はい」そこへきれいな少年が「いらっしゃいませ」と言いながら出てきた。
「あれバイト?」「ええ拾ったんですよ」「拾った?」「家出して来たらしくてコンビニの前で倒れてて」「マジか?」「行くとこないらしくて」「名前は?」「圭です」「いくつ?」「19です」「へーお前美人だね」少年は175cm位でスレンダーな色白の目鼻立ちのスッキリしたイケメンだった。
「翔さんとこで使えませんか?」「そうだな、でもお前男イケる?」「えっ…はい」「だと思ったわ。掃除、洗濯、料理、家事全般出来るか?」「出来ます。家でもやってましたから」「そうか、じゃ俺んとこの家政婦やってもらおうかな?食事付きで給料も出すよ。どうだ?」「やります、あの夜の相手もですか?」「アハハそれは様子見てからな」「翔さんいいんですか?」
「いいよ、身の回りの世話してくれてた奴が親が具合悪くて田舎に帰っちまったんだよ」「なるほど」
「俺にこいつ譲ってくれる?」「どうぞ、まだ手は出してませんからね」「上等だね。俺は神崎翔。この先でホストクラブをやってる」「ホストクラブですか?」「あぁだがお前は店には出さない。女は嫌だろ?」「はい、嫌です」
「じゃ俺んち行こうか?すぐ行けるか?」「はい荷物持ってきます」
「ちょっと電話するから待ってろ」俺はレモンサワーを飲み干して、店に電話してマネジャーに店を閉めてくれるように頼んでタクシーを呼んでもらい圭を連れてマンションに帰った。
青山の立派なタワマンの最上階に俺の住まいはある。
リビングからの景色は絶景で圭はその美しさに息を飲んだ。「きれいですね」
「そうだろ?圭は何処から来たんだ?」「横浜です」
「そうか。こっちへ来てくれ」圭を連れて部屋へ案内する。8畳ほどの洋室にダブルベッド、デスク、
応接セットがあった。
「この部屋を使いなさい。クローゼットはそこだからね。明日洋服とか買いにいこう」「はい。あのホントにお世話になっていいんでしょうか?」「もちろんだよ。心配か?」「素性の知れない僕なんて。」「それなりに事情があるんだろ?話す気になったら話してくれたらいいよ」「ありがとうございます。精一杯やらせていただきますのでよろしくお願いします」
「こちらこそ頼むよ。助かる。家事は出来るが苦手なんだ」「翔さんの食べ物の好き嫌い教えてください」
「わかった、そこ座ってて」圭は渡したノートに丁寧にメモをする。
それからシャワーをしてる間に圭がパスタとサラダを作ってくれていた。
「ナスのミートパスタか美味そうだな。ありがとう」
「お口に合うかな?」
ひと口食べて俺は美味いと圭に言った。「これから食事が楽しみだよ」「美味しいもの作ります」
食事の後片付けをして圭もシャワーをしに行った。
俺は仕事の電話をいくつかしてリビングでパソコンを打ち込んでいた。
「翔さんおやすみなさい」
「あぁおやすみ、ゆっくり眠るんだよ」「はい」
お辞儀をして圭は部屋へ行った。どれくらい経ったかパソコンを閉じたときに圭が入ってきた。
「どうした?喉乾いたらミネラルウォーター持っていきなさい」「眠れなくて…一人じゃ怖い」圭は不安げに怯えた瞳をしていた。
「そうか、じゃ一緒に寝よう、おいで」俺は圭の肩を抱いて寝室へ連れて行った。「ここへおいで」
ダブルベッドの布団を捲って圭を寝かせる。
「ごめんなさい」「いいよ。普段は遅いからベッドに入って寝てなさい。帰ったらお前のベッドに行く」
「はい。」
俺の方に身体を向けて見つめる圭の瞳から涙が溢れる。「どうした?何で泣くんだ?」「ごめんなさい幸せだから」「ふふっお前は可愛いな」不意に縋りついてくる圭を抱きしめた。
「いけない子だな。まだ手を出すつもりはなかったのに」俺は圭を抱き寄せて唇を奪った。「あっ…」
何度も深いKissを繰り返しパジャマのボタンを外し首筋から耳元、鎖骨へとKissをして胸に愛撫していたときに身体に無数にある傷に驚いた。「あっヤダ、見ないで」「圭この傷は?」
「こっちへ来る前に出会った人にひどい目にされて」
「全部脱いでみろ」
圭はパジャマを脱いで裸になった。無数に付けられた傷とKissのあとには息を飲んだ。「可哀想に、痛くないか?」「大丈夫です」
「はぁ、お前にこんなひどいことして何て奴だ。おいで」俺は裸の圭を抱きしめてまたKissを落とした。
何があったか話してみなさい。圭は翔に問われるままに話を始めた。
「エスペランサか」俺は友人の刑事に電話をして来てもらった。そして圭の身体に付けられた傷の写真を撮ってもらい事の経緯を調書してもらった。
「悪かったな」「障害でパクれると思うから。もし圭くんに連絡取るようなことがあれば連絡してくれ」
「分かった、スマホは新しいのを買うから脚はつかないだろ」「分かった。じゃまたな」刑事と鑑識の二人は帰った。「大丈夫か圭」
「大丈夫です。」
再びベッドに戻り甘える圭を抱きしめる。
「俺が上書きしてやるから、もし辛かったら言うんだよ」「翔さん、大好き」
「ふふっ可愛いなお前、子猫みたいだ」圭の身体に愛撫をして俺の身体の下で喘ぐ圭が愛しくてならなかった。「あんっ翔さん…あっ」敏感な圭の身体に俺まで熱くなった。
「はぁっ圭、お前凄くいいよ」「はぁっ翔…さん…
イク…あんっ堪んない」
可愛い声で悲鳴のように喘ぎながら快感に包まれてゆく。「翔…大好き」そう言って圭は意識を無くした。
その夜は絶頂感に震える圭をゆっくりと何度も抱きながら極上の夜を過ごした。
圭は俺の腕の中でまるで子猫のように丸まって眠りに堕ちた。「可愛い圭、俺がお前を守ってやるからね」
翌朝圭は俺の胸に顔を埋めたまま眠っていた。
圭の耳を舐めるとピクンと身体が反応する。
「可愛い俺の子猫ちゃん、そろそろ抱かせてくれな
いかな?」「んっ…翔さん…おはようございます」
「おはよう圭」圭の顎に指をかけ引き寄せてKissを落とす。「んっ…アァん」
「Kissでも感じるんだな?お前はここも、ここもここも感じやすいな」「ダメッ昨夜ので身体がバラバラになりそうなの」「ふーんだから?嫌か?」「嫌じゃ…ない。イジワル」
「ふふっ、おいで」「翔さん…めちゃくちゃ気持ちいいの」「そうか?天国行かせてやるからな覚悟しろよ!」「あんっ…」圭のものを口に咥えて舐めていると圭の声がかすれて来る。
「あんっ…やっダメッ出ちゃう」「いいよ出して」「アァン翔さん…イクね」俺の喉の奥へ蜜を放出して圭は果てた。その後俺は圭を抱き潰して深い陶酔の中へ堕ちた。次に目覚めたときは昼前だった。先に目覚めた圭が俺の耳たぶを舐めながら見つめていた。
「おはよう」「おはようございます」「くすぐったいと思ったら、大丈夫か?」
「うん身体がだるくて腰痛い」「ごめんな、激しすぎたね」「ううん、いいの気持ちよかったし最高だった。僕翔さんじゃなきゃダメだ」「ふふっ可愛いな。そんなこと言われたらまた抱きたくなるじゃん?」「ふふっいいよ!」
「続きは後だ。お腹空いたし買物行かなきゃ」
着替えて支度をしてから圭を車に乗せて車を走らせた。知り合いがやってる洋食屋に圭を連れて行くと、また次の人?と言われた。
前に世話係をしてくれてた奴を此処にも連れて来てたからだろうな。
「この子も美人さんだな」
マスターにそう言われて
「あいつとは違うんだ、こいつは一生俺のもんだから」俺はそう言って圭を見つめた。「翔さん…ホントに?」「あぁホントだよ。ずっと傍にいろ」「はい」
圭は嬉しそうに笑った。
それから買物に行って洋服や下着、必要な物を買った
「ありがとうございます」
「自分の嫁にするんだからいいんだよ」「嫁ですか?」「嫌か?」「いいえ嬉しいです。でも僕達昨日会ったばかりですよ?」
「一目惚れなんだよ、身体の相性もいいし。だろ?」
「はい。」その後は圭に新しいスマホを買いに行った。「さてちょっと実家に行くからな」「はい」目黒にある俺の実家に圭を連れて行った。
門構えを見て圭はビビった。
「実家ヤクザなの?」
「あぁ跡目は兄貴が継いでる」「そうなんだ」
車を家の前に止めると若い衆が出てきた。
「翔さんお帰りなさいまし」「ただいま〜みんな元気か?」「はいおかげさまで元気にしております」
「兄貴は?」「いらっしゃいます、どうぞ」「俺の大事な人だ頼むぞ」「はい」
圭を連れて中へ入ると若い衆が集まり挨拶を交わした。リビングに行くと兄がいた。「翔珍しいな」
「兄貴、圭だよろしく頼むよ」「こんばんは藤崎圭です」「いらっしゃい圭くんお前の恋人か?」「うん会わせておきたいと思って連れてきた」「そうか店はうまく行ってるのか?」
近況報告をして話をしたが、兄貴も圭が気に入ったようだった。
「圭くんは店にはでてないのか?」「圭は出さない、家政婦みたいなことをやってもらってる。プログラミングを始めたから忙しくてね。店誰かやってくれないかな?」「そうか、星川が昔はホストやってたよな?」「んっ」「成瀬いるか」「はい若」「星川呼んでくれ」星川は昔ホストをやっていてトップの座を守っていたほどだった。
「若お呼びでしょうか?」
「お前昔はホストやってたよな?」「はい」「翔がIT
の仕事が忙しくて店まで手が回らないらしい、お前クレイジーをやってくれるか?経験者の方がやりやすいからな」「はい精一杯やらせていただきます」
「ありがとう星川、じゃ明日店に連れて行くからお前スーツあるよな?」「はい大丈夫です」そんなわけで話はトントン拍子に進んだ。翌日翔が星川を連れてクレイジーを訪れ社員たちに事情を話した。
開店してからも常連客に星川を紹介して回った。
その時No.1ホストの優希に付いている女性客が翔に馴れ馴れしく声を掛ける。
「オーナーやめちゃうの?」「別に手掛けてる仕事が忙しいので店は彼に見てもらうことになりました」「寂しいわね」その時圭が俺にスマホを持ってきた。「翔さんお電話です」
「ありがとう」女が圭を見て声を掛けた。
「あなた横浜のエスペランサにいた子じゃないの?」
圭は一瞬ドキッとした。
「そうよね要のとこにいたでしょ?」「やめてください。この子に触るな」
女のスマホに着信があり、
「要あなたのとこにいたあの可愛い子クレイジーにいるわよ」電話を切って薄ら笑いを浮かべる女。
「星川2、3人集めてくれ」「わかりました。圭あっちへ行きなさい」「はい」しばらくしてエスペランサのオーナー滝本要がやってきた。彼の姿を見て圭は怯えて星川の後ろに隠れた。「圭、どこへ行ったのかと思ったらこんなとこにいたのか?」「近づくな!圭には指一本触れさせない、あんた自分がやったことわかってんのか?友人の刑事にお前が圭の身体に付けた傷の写真を撮ってもらって被害届出したからな」
「あれは合意の上だ」
「馬鹿か合意であんなことするわけ無いだろうが」
新道が口を挟んだ。
「あんたの事は調べさせてもらいましたよ、その女とうちのNo.1引き抜くつもりだったよな?」「うちの店には今後一切出入り禁止にします。それから圭は俺のものですから。今度関わったら海に沈めますからね」と翔が言った。すぐに翔の友人の刑事が来て瀧本は女と共に連行されていった。「翔…怖かった」
「うん、大丈夫だよ。もうお前に手出しするやつはいないから」圭は翔に抱きついて縋り付く。
「可愛いなぁお前若が夢中になるはずだ」と星川が圭の頭を撫でた。「傷は痛くないのか?」「大丈夫翔が上書きしてくれて愛してくれるから」「そうか良かったな」「圭そんな恥ずかしい事みんなの前で言うな」
「ふふっごめんなさい」
テレたように笑う圭が愛しくて堪らなかった。
「オーナー俺姫居なくなりましたよ」「心配するなもうすぐ来るよ」しばらくしてスラリとした長身の美人が来て翔が挨拶をしていた。「姐さんありがとうございます。紹介しますうちのNo.1優希です。可愛がってやってください」
「わかってるわ、アフターも出来るの?」「もちろんやらせていただきます」
優希が席に案内する。
「姐さん僕は他の仕事の方が忙しくてこの店は星川に任せることにしましたので今後共よろしくお願いします」「あらそうなの?星川昔は一斉を風靡したわよね。よろしくね」「よろしくお願いします」星川が姐さんに挨拶をする。
「翔さんそちらの可愛い方は?」「この子は俺の恋人です」「あら、美人さんね。あなたやっと恋人出来たの?」「はい。こいつと一緒にいてやりたくて」
「羨ましいわね、新しい仕事お役に立てることがあったら言ってね?」「はいありがとうございます。では失礼いたします」
お辞儀をしてその場を立ち去る。「じゃ星川頼んだよ」「はいお任せください。圭またね」「はいお疲れ様でした。」「行こうか圭」「はい僕お腹空いちゃった」「何食べたい?」
「居酒屋メニュー。でも帰って何か作るよ。」「ふふっ分かった」二人は楽しげに出ていった。
「圭聞いていいか?」
「はい」「家族は?」
「母とふたり暮らしでしたが母が亡くなって家も母の保険金も母の弟に取られて追い出されました。」
「いつのことだ?」「2ヶ月前、それで要さんと出会って彼の店にいたんです。」「弟ってことは圭の叔父さんだな?名前と住所を教えてくれ、お母さんのためにも取り返してやるから」「できますか?」
「出来るとも弁護士の先生に調べてもらうよ。それからお前の住民票をここへ移すことにしたから」「あの…ずっと傍にいていいの?」「もちろんだよ」
「ありがとう翔さん嬉しい、僕を置いてくれてありがとう」「お前の怯えた瞳に魅せられた。お前に笑顔を取り戻してやりたいって」「マスターに拾ってもらえなかったら今の僕は無いですよね。翔さんと出会うことも無かった。良かった翔さん」「あぁそうだね。さて晩ご飯は何を食べさせてくれるのかな?」
「あのね今日はとんかつかあるからカレー作るよ」
「そうか?楽しみだな」
「待っててね!」
数日後弁護士の采配で圭は母の遺産、家の権利証、預貯金等を取り返すことが出来た。「翔さんこれ翔さんが預かっててくれますか? 僕が持ってても仕方ないし」「わかった預かっておくよ。」「お願いします。ここにいたらお金使うことも無いから」「お金がいるときは言いなさい、生活費も足らなかったら言うんだよ?」「はい僕やりくり上手ですからね」「そうだな良くできた奥さんだよ。ここ座って」圭を隣に座らせて小さなケースを差し出した。中にはペアリングが光っていた。
「指輪?僕に?」「あぁ」 
圭の左手を取り薬指にリングを嵌めた。そして圭も俺の薬指にリングを嵌めた。
「圭愛してる」「僕も愛してる翔さん」二人はそっと唇を重ね深いKissを繰り返した。それから後圭は家事をしながら翔の秘書もしたり会社の経営等も手伝うようになった。まだ暑さの残る9月…久々に鎌倉へとドライブに出かけた。
「翔ずっと離さないからね」「あぁちゃんと付いて来いよ、愛してるよ圭」 
きらめく海の輝きに負けない幸せそうな圭の笑顔。
「ずっと二人でいようね」
そう指切りするふたり。  おわり