✐未来図2 | 愛の詩

✐未来図2

「2」


学校の前からバスに乗り込み、私は後ろへ座った輝くんに気付かれないように前の方に座った。
2つ先の停留所で停車ブザーが鳴り輝くんが横を通りバスを降りたので慌てて
バスを降りてこっそり後を追った。輝くんはすぐそばにある総合病院に入って行った。中へ入り心臓外科の受付へ診察券を出して待合室の椅子に座って鞄から出した本を読み始めた。
「心臓外科って輝くん心臓悪いのかな?」不安な気持ちを抱えたまま私は病院を出て帰路に着いた。
帰宅すると兄が帰っていた。兄の律は1つ上の高校3年。私は兄に輝くんの事を聞いてみた。
「お兄ちゃん早見輝くんって知ってる?」「輝?知ってるよ、ダチだけど、お前なんで輝知ってんだよ」
兄は冷やかすように聞いてきた。「昨日図書館出る時雨降ってて輝くんが傘に入れてくれてバス停まで一緒に行ったの」「ヘーそうなのか、輝は良い奴だぞ」
「部活とかしてるの?」
「いや、してないな、あいつ心臓が悪いんだよ、だからスポーツは禁止されてるらしいよ。」兄の言葉で輝君が病院に行った理由がわかった。翌朝バスに乗ると「おはよう」と輝くんが笑顔で言ってくれた。「おはよう輝くん」「昨日はごめんね。今日は図書館行こうね」「はいスケッチ持ってきたの」「ありがとう楽しみだなぁ」学校に着いて授業が始まっても私は上の空で先生の言葉も耳に入らなかった。
お弁当の時間になり友達とお弁当を食べ始めても溜息つくもので、みんなが心配そうに聞いてくる。
「由菜どうしたの?なんかあったの?」「えっ、ううん、ちょっと寝不足」「嘘だぁ、その溜息は恋の悩みでしょ?」奈々に言われて私は何も言えなかった。
「ヤダ当たり?誰?」
その時入口から由菜と呼ばれて振り向くと兄がいた。
手招きされて行くと後ろに輝くんがいた。「輝くん」
「学校来て輝に聞いたんだよ」「まさか律の妹とは思わなかったよ。びっくりした。」「私も聞いてびっくりしました。」「オレの可愛い妹だから大事にしろよ輝」「わかってるよ」そう言って輝くんはピーチの紙パックのジュースをくれた。「じゃ放課後ね」「はいありがとう」二人は教室を後にした。それから私は女子達の輝くんについての質問攻めにあった。
「白状しなさい。いつ出会ったの?」「昨日図書館での帰りに雨に降られて傘持ってなかったから入れてくれてバス停まで行ってバスに乗って帰って来たの」
奈々は真っ直ぐに私を見て話を聞いていた。
「惚れた?」「うーん多分ね」「イケメンじゃん?」
「取らないでね」「取るか。あのさそれ彼からもらったの?」「うんもらった」「それのジンクス知ってる?」「ジンクス?知らない」奈々は私の頬を両手で包んで言った。
「君は僕のピーチ姫だよ」って意味。「ピーチ姫?」
「つまり告白ね彼の」「えーマジ?どうしよう」
「悩まなくていいじゃん?好きって顔に書いてるよ」
「エー」私は自分でも真っ赤になってるのがわかった。輝くんがくれたジュースを飲みながら窓の外を見つめた。放課後靴箱の所で輝くんと兄が待っていた。
「来た来た、じゃ輝、由菜頼むな、オレバイトだから」 「うん、行ってらっしゃい」「行ってらっしゃい」
輝くんと兄を見送り二人で歩き出した。
「今朝学校来たら律が由菜と図書館で会ったんだろって言われてさ、お前の妹なの?ってなったんだ」
「昨日律に輝くん知ってる?って聞いたから」「そうなんだ?偶然だね」「びっくりしちゃった。あっお昼ジュースありがとう」
「飲んだ?」「はいピーチ大好きなの」「律が言ってたから。なんかあれにジンクスあるみたいだね?知ってる?」「いえ友達から聴きました」「そうなんだ?あのさ、僕のピーチ姫になってくれる?」「あっ、あの…私でいいんでしょうか?」「うん、由菜がいい!なってくれる?」「はい」輝くんがちょっとテレながらジッと目を見て告白してくれて嬉しかった。
図書館で隣同士に座ってスケッチブックを広げた。
「へーきれいだね、上手だな、キャンバスに書いたりするの?」「それはまだしたことなくてスケッチブックとかに書くだけなんだけど」「ふーん、ねぇ今度俺の絵書いてくれない?飾りたい」「わかりました、書きます」「ホント?嬉しい。書くとこ見たいから今度スケッチ行こうよ」
「そうだね、行きましょお弁当作ります」「マジ?嬉しい、いつにする?日曜はどう?」「大丈夫です。」
「じゃ日曜日ね、オレ迎えに行くから」「いいの?」
「もちろん」「ありがとう」スケッチの約束が出来て凄く嬉しかった。


続く