絵巻は完成したかな。 | 塩川渉オフィシャルブログ「塩川渉の塩分多め」Powered by Ameba

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再び帰って来ました。
なるべく書きます。
くだらない事でも許してください…

鬼切丸伝〜源平鬼絵巻〜


全公演が終了しました。


沢山のご来場、ご声援、本当にありがとうございました。




お話を頂いた時、原作を知らず、情報を仕入れたものの、今作の源平の話の主軸は、主人公である「鬼切の少年」「源義経」「武蔵坊弁慶」。


自分の役である「源頼朝」は、正直、モブとしての立場が多い印象。


確かに、物語にするに当たって、ドラマチックなエピソードに頼朝は世間的には向いていないのが通例。ほとんどの源平モノは義経がメインとなって話が展開される。


頼朝にも沢山のエピソードはあるけど、そのどれもが一般ウケするようなエピソードではないのも、自分自身わかっている。



それでも、歴史好きな自分としては、自分が今まで知り得てる源平、平安末期の知識を再構築。それをどうやって芝居に取り入れるかを考え、台本を頂いた時点でそれを擦り合わせられたらなと思っていたんだよね。



もちろん。源頼朝という配役に運命めいたものも感じずにはいられなかったわけだけど。


何故なら、俺自身、「塩川」という姓は元々は武士の家系。幕府最後の将軍、徳川慶喜に仕えた家臣だったと、教えられていたし、姓を辿れば「清和源氏」という武士の血脈に行き着く。


そして、自分の生まれ故郷の「富士宮」は源頼朝の由縁のある地が数多くある。

「富士の巻狩り」
「富士川の戦い」

は教科書にも出てくる。



「陣馬の滝」や「流鏑馬祭り」は馴染み深いし。



それでいて、武士政権=幕府 最初の将軍を演じるということに運命を感じずにはいられなかったな。



いざ、原作を読ませて頂き、やはり頼朝は義経を悲劇の人にするための、所謂、悪者としての位置付けは否めない。


これを如何に脚色されるのかなと、脚本の壱岱さんと顔合わせ前にお話した時に

「頼朝としての苦悩や、悲しさも描きたい」と聞き、台本を受け取るのを楽しみになった。




顔合わせで、台本を頂いた時は、実はまだ全ての台本が出来上がっていなかった為、頼朝のエピソード含め、全てのエピソードは描かれていなかったんだけど。


稽古が進むに連れて出来上がっていく台本と共に、役者それぞれの個性を生かしてくれた壱岱さん。


鬼切丸伝はフィクションだけど、史実に出てくる人物のバックボーンなど、の相談や提案に乗って下さり、役作りを進めることが出来たんだよね。



今作の鬼切丸伝でも、描かれてはいるけど、過去の将軍であったり、何かのトップに立つ人間というのは、きっと全てを正義として成立させることが出来ないんだと俺は思うんだよね。


だからこその、心の葛藤や、人には見せられない顔であったり、背負うべく業みたいなものがあるんだと。


それを今回の鬼切丸伝で俺が演じきれていたのかは、観てくれた方々それぞれに委ねます。


少なくとも、頂いた感想の中に。

「頼朝のことが嫌いになる」


という感想を頂けたということは、義経や幾多の頼朝の采配によって生命を散らした人たちへの感情がそれによって高められたのかな。と。


受け取れもするな。と。



公演のフィナーレでの頼朝と政子のやり取り。


征夷大将軍になった頼朝に対し

政子「 ……おめでとうございます」

頼朝「…誠に、そう思っておるのか?」

政子「……」

頼朝「多くの血が流れ過ぎた。もう戦のない世を、ワシが創る」

政子「お願いします!」

頼朝「政子よ、力を貸してくれ。」

政子「はい」


ここに、頼朝としての全てが集約していたのかな。と。

もちろん、中盤に描かれている、頼朝の源氏棟梁としての願いも、交差する。


新しい時代を築く為に、犠牲を払わなければいけないという非情の感情と、その業を自分が背負っていく、そして、唯一、弱さを見せた妻、政子に対してその手助けを求める。

史実では、頼朝はこの数年後にこの世を去り、源氏は北条家が裏で操るといえば聞こえは悪いけど、きっと、この鬼切丸伝の頼朝と政子であれば、政子が頼朝の意志を継いでくれていったんじゃないかと、ifストーリーも考え付くw


劇中では、戦乱に身を投じて非情の顔を見せ、妻への唯一の弱さを、そして、鬼の存在にある意味頼る形で戦乱を平定、幕府を樹立。


時代の本筋を背負う形での今作の頼朝であったのかな。と。



「後の世も、また後の世も巡りあへ、染む紫の雲の上まで」

義経の辞世の句ではあるけど。

頼朝もきっと、後の世で自分のために、自分のせいで生命を散らした人たちと巡り合い、笑い合えたらと思っているんだと。


そんな意味を込めたラストシーンの未来を見つめる笑顔に出来たらな。と。



それが、観てくれた方々に伝わってくれていたら幸いです。


自分のことばかり書いてきたけど、今作は本当に良いカンパニーと出会えました。



同級生、同年代がこんなに多い現場も珍しく、若いメンバーや、多分、普段活躍の場は違うであろう人たちから多くの刺激を貰い、みんなで創り上げた作品だな、本当に思います。

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自分たちや、観にきてくれた皆さんに吹いた「色なき風」が、巡って、またみんなの元へ吹きますよう。祈ってます。








鬼切丸伝〜源平鬼切丸伝〜

源頼朝as塩川渉