冬シーズンは湯河原に通ってました。

その大半を秋雨(二段)に費やし、春までもつれこんでしまったが無事完登。

というわけで、今シーズンの湯河原での登攀記録を。

 

湯河原を訪れるのは実に4年ぶり。

当時は二段の世界に足を踏み入れたくらいの時期で、サブウェイ(二段)にはまりまくって、確か5Daysくらいかけて完登した。

サブウェイ完登後は、他にお目当ての課題が特になく、その後4年間もブランクができてしまった。

 

そんな湯河原に再び籠る気になったのは、なぜか秋雨を打ち込んでみたくなったから。

細かいカチをつないでいくナガモノ課題。

私に向いている要素は一切なし。

苦手を集約したようなその内容が、九州ツアーを経て再び岩欲が高まりつつあった私をなぜか惹きつけたのである。

そう、私はドMクライマーに目覚めたのだ。

 

ついでに4年前にコテンパンにされた十郎(初段)と、難しいと評判だが触ったことのなかったしとど(初二段)もやってみたかった。

 

十郎(初段)

 

まず最初に取り組んだのは十郎

4年ぶりの湯河原は、ほんのわずかな隙間時間に訪れたもので、滞在時間は2時間程度であった。

今の自分なら2時間もあれば十郎くらい楽勝だろうと踏んでいた。

アップもせずにトライ開始。

結果、大苦戦。

核心は二手目だと思うけど、一手目が全くできず泣きそうになる。確か4年前はできた気がするのだけど。

二時間経過しそうになり焦り始めたが、当時華麗に登られていた渚の完登動画を参考にしてみたところ解決。

左足を粒に乗せるのではなく左側にスメアしたら初手は取れた。

初手が取れたトライで、二手目は気合で出したら止まった。

保持力はレベルがあがっているということだろう。




 

4年前も何度かトライするも全くできず、ひょいひょい登る渚姉さんに羨望の眼差しを送るしかできなかったものだが、ちゃんと成長できてよかった。


初日はこれで終了。

果たして湯河原まで来て十郎だけ登って帰る人が私以外に存在するのか問うてみたい。

 

 

Wプロジェクト(二段)

 

今シーズン2度目の湯河原訪問時以降は、朝7時くらいに来て昼前には帰宅する朝活スタイルを確立。

これが道も岩も渋滞せずで、実に快適。

普段はジム状態の貝殻岩でも、さすがに早すぎて誰もいないので、アップでWプロジェクトを再登してみる。

4年前、私が二段童貞を卒業した課題。

当時でも確か5トライくらいであっけなく登れた記憶がある。

今ならフラッシュできるんじゃないかとやってみて、案の上できなかったわけですが、体が温まってきた5トライ目くらいで無事完登。

 

限定はないけど、初手はカチを中継するとめちゃくちゃ簡単になると思う。





 

しとど(初二段)

 

続いてしとど。グレードは高くないけど、体感難易度は貝殻岩最難と言われているとかいないとか。

そんなわけである程度長期戦を覚悟したが、意外にも1時間くらいで完登できてしまった。

初手を取ったあと右手をワイドピンチに送るのが難しく、繋げるとそこで何度も失敗したが、なんとか捉えることのできたトライでそのまま完登。

 

前評判よりは簡単に感じたが、シンプルにパワーをこめればよいという課題なので、自分に向いていたのだろうか。

まあでもWプロジェクトよりは難しいので、グレードは逆でも良い気がする。



 

秋雨(二段)

 

しとどを仕留めた後、いよいよ大本命の秋雨のトライを開始した。

個人的には秋雨は湯河原のラスボスと位置付けていた。

もちろん湯河原に秋雨よりグレードの高い課題はあるものの、自分の限界グレードの範囲内ではおそらく自分にとって最大の難敵。

4年前は全くやる気もしなかったものだ。なにしろ一段グレードの低い秋晴れ(初段)すらお手上げ状態だった。

思えば当時は高グレードで成果を出すことに躍起になっていて、得意系の課題(ゴリゴリオラオラ系)ばかり探して打ち込んでいた。

今はグレードに依らず、どちらかというと苦手な課題を打ち込んで克服することにやりがいを感じる。

 

そんなわけで今シーズンの最大目標かつ湯河原の卒業課題という位置づけで取り組み始めた秋雨は、やはり私には難しく、結論から言うと5Daysを要した。

 

Day1は時間が短かったのもあったけど、トラバースパートが全パートばらせず。

Day2はようやくバラせたけど、トラバースパートだけで4分割くらい必要。絶望しかない。

Day3でようやく木漏れ日パートに合流できるようになる。が、合流までに消耗しきっており、木漏れ日の核心パートを突破できない。

 

もういけるだろうと思われたDay4。気持ちよく登って満開の梅を満喫したかったのだが、この日もあえなく敗退。

 

秋雨の難しさは大きく3つある。

①かなりの保持力を問われるトラバースパート

②とにかく長くて(25手以上)ヨレる

③木漏れ日パートが高さがあり、下地もあまりよろしくない

 

①については、足で負荷を減らすのが下手すぎるので、最初は一手一手が絶望的に悪く感じた。でもずっと触っているとさすがに足の置き方も上達し、後半は普通に保持できるようになっていた。


②についてもムーブの最適化と、慣れもあって、Dayを重ねるごとに少しずつ高度をあげていけた。

 

最後まで苦しめられたのが③である。

Day4では、木漏れ日上部の核心にはほぼ毎トライ突入するものの、ヨレ過ぎた状態で手を出すのを躊躇してしまい、落ちまくる。

ほとんどの時間帯を一人でトライしていたので、マット数は心もとなく、また少しだけ一緒にトライされた方が落下を失敗して負傷するのを目撃してしまったのも影響した。

木漏れ日上部は持ち感は良いので、ヨレた状態でも一か八かで手を出そうかとも思ったが、怪我のリスクを負ってまでぶっこむことはなかろうと冷静になった。

試行錯誤の末、木漏れ日中間部でカチを中継しまくってリスクを極限まで減らすムーブにたどり着きたところで、体力切れ。

 

そして一か月ほど間を空けたDay5。

木漏れ日をアップでのぼり、1トライ目で残念な落ち方をした後、じっくりレストをはさんで2トライ目で無事完登。

やはり木漏れ日の中間部あたりで強烈なヨレに見舞われるものの、省エネムーブを駆使してなんとか上部に到達。

リップ付近はガバガバだが、それでもヨレまくっていると全く余裕がない。

マントル返した後、しばらく動けなかった。




 

ここで残念な事態発生。GoProが完登トライの途中でデータ容量切れになり、最後まで撮れていなかった(あと2手くらいだけど)。

上部で死にそうになっている時に、GoProからピーって音がなったので嫌な予感はしてたけど、登ってるときはそれどこじゃなかった。

バッテリーは気にしてたけど、データ容量とは盲点であった。

ここまでムーブを洗練させたので、リピートできる自信もあったので、1時間ほどレストをはさんでリトライしてみた。

そしてあえなく撃沈。動画撮影のための再登でうまくいった試し無し。もう一度レストしてまで撮影するモチベはわかなかったので、諦めて帰宅した。

 

一つの課題にこれだけ打ち込んだのはネクロフォビア以来かな。

ちょっと時間かかりすぎた感は否めないが、いろいろと成長を感じられた思い入れのある一本となった。

これまで日数を要した課題は、途中で義務感やプレッシャーの方が強くなり、正直トライを楽しめてはいなかったが、秋雨に関しては、トライしている間はずっと楽しむことができた。

ムーブを少しずつ練り上げることで完登へ着実に近づいていくプロセスが面白かったのだ。

こうなると、ナガモノも悪くないなと思う。

が、ボルダー課題として秋雨ほどの手数の課題をやることはおそらくもうないかな。

 

ここ一年くらいは外岩の頻度がめっきり減っていたので、久々に充実したシーズンとなった。

また自分のクライミングの幅を広げてくれる課題を目標にして頑張りたい。