宇野side
「宇野ちゃーん!材料どこ??」
「宇野ちゃん!テープ知らない?」
「宇野ちゃん、ちょっと来て!!」
「ありがとう、宇野ちゃん!!」
文化祭前日の今日は1日中準備。
朝からてんやわんや。
「ねぇ、日高くん。焼きそばと言えど、料理は形も大事よ??」
「それは俺を料理担当にした宇野が悪い。」
「はぁ?!」
この男は本当に相変わらずです。
「まぁまぁ、そんなにカリカリしないの。」
「直也くん、上手いよね。」
「まぁ彼女もいない寂しい独り身ですからね。自炊くらいしますよ?」
そう言ってる直也くんが1番てきぱきしていて、本当に助かる。
西「日高が1番できないもんねー。」
浦「そんな偉そうに言えないでしょ、西島くん?」
宇「っていうかなんでにっしーなの??」
日「宇野、その質問5回目。」
宇「だってさー。絶対、秀太の方が安全だよ?」
西「しょうがないでしょー、秀太があっちで活躍しちゃってんだから。」
なぜか、もともと調理担当のはずだった秀太が外装にまわり、外装担当だったはずのにっしーが調理にまわっている。
「宇野ちゃーん!キャベツってどこにある??」
宇「あ、待って!!持ってくるー!!」
急いで材料を取りに家庭科室を出ると、後ろから日高くんが着いてきた。
日「俺も行くよ、どうせ宇野ひとりじゃ持てないでしょ。」
宇「日高くんはひとこと余計なんだから。その一言が無ければもっとモテるよ??」
日「宇野以外にはジェントルマンだからモテますー!」
日高くんとはいっつもこんな感じ。
でも、これが私と日高くんの間では1番心地いい。
日高side
宇「よし、これで大丈夫。行こ!」
幾つかキャベツを持って家庭科室に向かおうとしたそのとき──────
「あの……。」
宇「…………あ!おじさん!!」
「久しぶりだね。」
そこには俺の知らない人が笑って立っていた。
日「ん……どなた??」
宇「体育祭のとき、私リレーの練習してたじゃん?そのときに知り合ったの。同じ時間にランニングしてたおじさん。体育祭のときも応援しに来てくれて!!」
「良かったよ〜、あの時のリレー。」
宇「ありがとうございます!!あの……それで今日は?」
「そうそう、いけない忘れちゃうところだった。みんなに差し入れがあってね。」
宇「差し入れ?そんな、悪いじゃないですか……。」
「いいんだよ。それで……駐車場まで取りに来てくれないかい?」
宇「あ、いいですよ!!」
日「俺も行きますよ。……あ。」
と言ったものの俺と宇野の手にはキャベツが……。
宇「日高くん、キャベツ持ってて。私、おじさんと先言ってるから。おじさん、知り合いだし、大丈夫!」
日「……分かった。すぐ行くから。」
宇「うん!」
これが運命の分かれ道、だったんだ。
俺が駐車場についた時、宇野とその男はいなかった。