1957年のアジア風邪の流行をきっかけにインフルエンザワクチンの接種が本格化し、1962年から小・中・高校生を対象とした集団接種が始まった。
これは、学校という集団生活の場での感染拡大を抑え、インフルエンザを制圧する目的でした。
しかし、どんなに予防接種を打っても、インフルエンザは毎年決まって大流行しました。
こうしたなか、1979年の初冬、群馬県の前橋市医師会が集団予防接種の中止に踏み切りました。直接の引き金は予防接種後に起きた痙攣発作の副作用でしたが、この伏線には、以前から予防接種の効果に強い不信感を抱いていたことがあったのです。
ただ中止しただけではありませんでした。予防接種の中止によって、インフルエンザ流行に一体どのような変化が現れるのか、開業医が中心になって詳細な調査を始めました。予防接種中止の決断は正しかったのか、あるいは間違っていたのかを検証するためです。
そして、5年に及んだ調査は、前橋市医師会の判断が正しかったことを裏付ける結果となりました。
(通称「前橋レポート」)この調査では、ワクチン接種を受けた地域と受けなかった地域を比較した結果、接種による明確な予防効果が見られず、場合によっては接種した地域の方が罹患率が高いケースさえあることが示されました。
さらに、ワクチン接種による副反応の問題も深刻化しました。1977年から1988年にかけて集団接種が行われた時期には、重篤な副反応や後遺症が報告され、国に対する損害賠償請求訴訟も起こりました。これらの問題を受け、保護者や医療関係者からの反対が強まり、効果とリスクのバランスが疑問視されるようになりました。
こうした背景から、1994年に予防接種法が改正され、インフルエンザワクチンは強制的な集団接種から任意接種へと移行しました。
クリーブランドクリニック(Cleveland Clinic)は、アメリカ合衆国オハイオ州クリーブランドに本拠を置く、世界的に有名な非営利の医療機関。1921年に設立され、現在では医療研究、教育、患者ケアの分野でトップクラスの評価を受けている。特に心臓病学や心臓手術の分野で国際的に知られており、米国の病院ランキングで常に上位に名を連ねている。
2024-2025年シーズンにおいて、インフルエンザワクチンの有効性を評価するために、同クリニックの従業員を対象とした前向きコホート研究を実施。この研究はプレプリント(査読前論文)として2025年4月4日に公開。
クリーブランドクリニックの主要研究では-2024~25 年のインフルエンザシーズンにおけるワクチンの有効性は26.9%であることが判明しました。
ワクチン接種を受けた人は、ワクチン接種を受けていない人よりもインフルエンザの発生率が有意に高かった
ワクチン接種状況別に層別化した被験者のインフルエンザの累積発生率を比較した Simon-Makuch プロット。ゼロ日は2024年10月1日
ワクチン接種開始日である2024年10月1日時点でのクリーブランド クリニックのオハイオ州施設の全従業員53,402人が対象です。ワクチンを受けた人と受けていない人で、インフルエンザの累積発生率を、その後 25 週間にわたって比較しました。研究終了時までに43,857人 (82.1%)がインフルエンザワクチンを接種していました。期間中にインフルエンザが発生したのは1,079人(2.02%)でした。圧倒的にインフルエンザ A型でした。