突然青少年のための大人の短編小説

タイトル「ペニスバンド・ロックンロール」

フットルース工業高校との練習試合当日を迎えた。
天候とキャプテンの生理が不順だったため、フットルース工業の面々に

「すまん。帰ってくれ。」

の一言で練習試合は中止になった。

僕はまだ、「後姿 is cute」を完成できないでいた。
この大技はとにかく瞬発力が求められる。
一度動き出すと止まる事の無い激しい前後のピストン運動に加えてわずかな恥じらい、あとは何よりもオフザボールの動きが成功のカギを握っている。
そのため、一歩間違えば便秘→キレ痔のコンボを決めてしまう可能性もあり、それでもこの技を習得しようとした数多の豪傑達が、そこから肛門の傷を化膿させて選手生命を絶たれてしまったという、とにかく危険な技なのだ。

この技を正面から受け続けたキャプテンは、不完全な形の技ながらも幾度と無くアクメに達し、僕の背中には興奮のあまりにキャプテンが立てた爪あとがビッシリと残っていた。
キャプテンは明らかに体重が減っていた。
元々モデル体型のキャプテンにとって、それ以上に体重が減る事が何を意味するかは素人の僕にでも容易に理解できた。
この人は、ペニスバンドロックンロールを制覇するために、己の選手生命を絶つ覚悟ができていたのだ。
僕はキャプテンのその固い決意に答えなければならない。
そう思った。

新しい専用グラウンドは、日本らしい木のニオイで満ち溢れた開放的な空間で、庭には二羽ニワトリがおり、私達の練習は一層緊張感を増した。
東京都予選を明日に控えたこの日の練習終了後、キャプテンは神妙な面持ちで無言のまま私達の前で固まっていた。
物凄い緊張感であった。
ペニスバンドという競技に全てを賭けた男と女達にしかわからぬ、言葉では伝えられない何かが、一番下っ端の僕に充分に伝わってきた。

そしてキャプテンは長い沈黙の後、その重い口を開いた。

「何やってきたんだろ…私達…」

露骨な後悔だった。
キャプテンだけでなく、ほかの誰もが目を背けたくなるような日々。
夢から醒めた時、僕達は真人間には戻れない事に気付いた。

そして翌日。
開幕戦の相手のバスが派手にバスジャックされ、私達は順当に2回戦に進出を決めた。
その後、2回戦では相手校の監督がお昼ご飯を忘れて埼玉の山奥の家に取りに帰るとゴネたおかげもあり、またもや不戦勝。
続く準々決勝の相手に至っては、競技すら間違っていたのだから驚きである。

あっという間に、準決勝に駒を進めた我ら龍艦砲高校であったが、準決勝の相手は先日の練習試合で山王丸が怪我で戦線離脱していたとは言え、龍原砲高校を組織力で破ったヘルレイザーズ第二商業だった。

一方の準決勝第一試合では、龍原砲高校が山王丸を温存しながらも、スーパーゴールデンルーキーの呼び声高い1年・マルシアが特Aランクの大技「夜の帳」と「ゼンノロブロイ」を大量にキメ込み、難なく決勝進出を果たしていた。

このマルシアという女、実は高崎と因縁浅からぬ相手であった。
マルシアはやはり残念ながらブラジル出身で、龍原砲高校に来る事になったのは所謂「ペニスバンド留学」というヤツだ。
中学時代に高崎は全国大会決勝で、マルシア率いるディック区立マードック中学校と対戦したが、「増田ドリラー」の前身である「横山トリガー」を完全に封じられた高崎は成す術もなく、試合のほうもマルシアの個人技の数々で完全に支配され、第2ピリオド終盤で完全なワンサイドゲームの様相を呈していた。
第3ピリオド開始前に、高崎率いるウィリアム区立ルスカ中学校のセンターヴァージンブレイカーの桜庭が

「スッゴイ滑るよ!何で?何で?」

と審判に抗議した事で、マルシアと主力数人が足にヌルヌルするクリームを塗っている事が判明し、マルシア達は退場処分と半年間全裸で溶接現場にて中途半端に似ている物真似をやらされる事に決まった。
第3、第4ピリオドと高崎の「横山トリガー」は火を噴いたが、それでも逆転するまでは至らず、最終的には37-30でルスカ中学は準優勝に終わった。

天才と呼ばれた高崎の唯一の挫折だった。
試合後、全裸にバナナボート姿でリラックスした様子のマルシアとすれ違った際に

「横山トリガーには致命的な弱点がある。」
と半笑いで言われたそうだ。
そこで高崎は現在の「増田ドリラー」という技を完成させたのだ。

準決勝第二試合が、舐めダルマが乳首を吸った時の卑猥な音と同時に始まった。
まずボールを受け取った高崎は、ヘルレイザーズ第二商業のゴールをめがけ、いきなり「増田ドリラー」を放ったのだ。
無謀とも思える位置から、まだ適温のローションも投下されていない状況で打った増田ドリラーは、組織で守るヘルレイザーズ第二商業ディフェンス陣にアッサリと封じられた。

その時、高崎は笑いながらいった。

「次で…終わりだ…」