2022/07/15

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ある年齢から陽射しの強さに
瞳が
敏感に反応するようになった
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薄雲の日には
白が
鮮やかに映る
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北向きの風が涼やかな
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昭和42年8月26日〜29日


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真っ暗な闇の中
最上川の激流音が轟き
狂った風が古い木造旅館を揺さぶる
母の膝に小さな弟が乗り
あたしと妹は母の両脇にしがみついていた
母は昭和のお母さん定番夏ワンピース
アッパッパーを着ていた
柄は白地にエンジ色の花模様
そしてウエストで結ぶ前掛けを締めていた
その前掛けの裾を握りしめる姉妹
幼いあたしは眠気には勝てず
うとうととし始めた頃
隙間だらけの雨戸から明かりが差し込んだ
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その隙間から
そっと枯れ支流に架かる吊り橋を見る
間下まで水が迫っていた
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地元消防団の車が停まった
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避  難
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母が弟をおんぶ紐に括り付け背負った
あたしと妹は
消防団員が抱き上げた
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狂った激流の
濁音轟音
幼いあたしは背中で聴いた
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消防団員に抱き上げられた

あたしは狩猟犬セッターのハナが気になった

ハナは雷が大嫌い

鳴り出したら仔犬を放り投げて

一目散に逃げ出す

あたしは気になり辺りを見渡す

するとハナは母屋の軒下で仔犬を腹に抱いて

優しげな眼差しを向けていた

あたしは小さな声でハナと呼んだ

ハナが一瞬あたしを見た

あたしは今までの恐怖が一気に蘇り

泣きじゃくってしまった

宥める消防団員の大きな手が背中を撫でる

あたしは安堵感から

更に火がついたように泣く

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雨音に混じって怒声が聞こえた

あたしは泣き止み

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その方向を見る

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最上川の際に建つ別館お風呂館

その横に並ぶ老木の松の木を軸に縄で

グルグル巻きに囲み

お風呂館を支えていた

その

お風呂館が傾き更に

ミシミシと不気味な音を立てた

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頭が叫ぶ

逃げろ

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一斉に黄色いヘルメットが散らばった

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その直後に

お風呂館が松の木と共に悲しい音を

雨空に打ち付けるように

最上川の激流に飲み込まれていった

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牛や馬や豚が瓦礫と共に悲しい鳴き声をあげ

為す術も無く流されてゆく

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幼いあたしは

生まれて初めて恐怖を知り

生まれて初めて悲しい光景を見た

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つのつく年齢は神の子

云われる

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あたしは

つのつく最後の年

ここのつ九歳

自然の恐ろしさ

美しさを知った

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今でも

最上川に抱かれた山形の自然を見ると

身が竦む

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それで良い

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人は恐怖を知ると

身の丈と身の程を知る

還暦超えた我が身がいる

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その幸せを感じよう

思う今日この頃

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🔷All of you🔷

激しい雨音響く横浜その音を聴きながら

とうこは

あの幼い日に遭遇した物語を

書いています

生きてナンボ

生きて…生きて…

生きぬく

日々は愛おしく日々は奇跡

今日ある日に

《感謝》

♡とうこ♡

あっ🤭だいすきな人

疲れが現れる週末金曜日

くれぐれも足下注意

お願い