2021/12/20


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小細工の要らない

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贈り物

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横浜山手の空

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まんま晒せたら

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し♡あ♡わ♡せ

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冬の乾燥を

一際…感じる朝だった

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そんな日は珈琲の薫りが

一段と引き立つ

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その冴えた薫りを届けたくて

店の入り口を全開にする

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カウンター内は

デッキブラシでゴシゴシ洗いをするため

コンクリート剥き出しの床

さすがに寒い

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間なしに足下から冷気が入り

脚首が冷えてくる

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おはよう!ママ…と

モーニング珈琲とは無縁の冴子が

おー開けっ放しでサム…と

首を縮めながら

扉を閉めカウンターに腰掛けた

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朝っぱらから珍しいネ

早起きは三文の徳かい?と

あたしは皮肉った

まぁね…探し物していて

眠れなくなったから……と

声に張りがなかった

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元来…夜型のせいか青白く透けた肌質だが

今朝はその薄い皮膚が

一層…朝日に透けていた

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あたしは濃いめの珈琲を差出しながら

それで見つかったの?と聞いた

うん!夜中に主人が寝てから

懐中電灯を照らし車内を探したら

あったの

それで徹夜かい?

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冴子は返事もせずに

珈琲スプーンの背を使い器用に

ミルクを垂らしながら渦を作っていた

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美しい渦は暫く形をとどめていたが

何の躊躇もなく冴子は崩した

そして自慢する事も無く

苛立ちながら珈琲をかき混ぜた

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あたしは…その仕草が

何故か気になった

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ウチのヒト…嘘をつかせる人なのよね

あたしは嘘なんかつきたくないのに

自分が望む答えが欲しい人なのよ

だから…あたしは

つきたくない嘘を言って

喜ばせてあげるんだ…と

ひと口珈琲を啜った

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あたしは仕込みをしようと

キッチンに入った

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冴子は…その隙を見計らったように

ママごちそうさま…と

か細い声と500円玉を残して帰った

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扉は開けたままだった

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その数日後…冴子のご主人から

電話があった

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自ら…冴子が亡くなりました

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あたしは…訳を聞く気にもならなかった

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その夜…冴子と眺めた河にゆく

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二人で水面に映るネオンを見つめ

何度も悔し涙を流し

そして…大丈夫と言い合った日

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今度こそ嬉し涙を流そうって言ったのに

冴子アンタは最後まで

あたしに

悔し涙だけだったネ

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大バカ

言いながら

500玉を勢いよく投げた

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冴子の

大丈夫

言う声

聴こえた

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🔷All of you🔷

まんまの心を晒せたら

どんなに幸せだろう

晒し下手な人の口癖

大丈夫

でもそれは

サイン

《感謝》

♡とうこ♡

あっ🤭だいすきなひと

お昼抜いちゃダメ

寒い日こそ食べよう

お願い