2020/11/13
あなた…を
Sheaeffer万年筆を
あなた…を
みつめている♡ようで
みつめて♡いない
あなた…を
あいしている♡ようで
あいして♡いない
そんな…刻
まったり…
ゆったり…
ぼんやり…
明るい陽射しで
過ごす…刻
あたし…の
愛しい♡刻
そんな…刻を過ごしていた
ある週末(2007)
スマホの画面が光った
前職の上司から
あの方が…亡くなった…との
知らせだった
山陰の日本海側に産まれた
あの方は…
女性より美しい指の持ち主だった
ある晩秋のマリーナ
プールサイド
白い葡萄柄のテーブルに
珈琲カップ…ふたつ
さざ波立つ…海
砕ける…波音
暖かい…陽射し
あの方は何かを書き留め始め
あたしは…
そのシャープな横顔を眺めていた
Sheaeffer万年筆を
美しい指先に優雅に挟み
キャップが銀色に煌めいていた
流麗な文字を一文字
永
永字八法
この字を上手く
書けるようになりなさい…と
教わった
あたしは…練習に飽きると
あの方が
書いている紙に悪戯書きをした
あの方は
それを小さく叱り
そして…笑いながら
あたしを嗜める
その笑顔は
端正な顔立ちに似合わない
幼く崩れる笑顔
その笑顔に会いたくて
悪戯する
あたし
しつこく何度も繰り返し
しまいには
ふたりで笑い転げた