2020/11/01

霜月初日
あたしの霜月は
面影の人々達の
誕生月
出逢い
そして
別離…
霞みながら
いにしえに…彷徨い
うつつに…惑い
時が…
あたし
弄ぶ
霜月


あたしは…躍る心を押さえながら
ゆっくりと
ヒールの踵を絨毯に埋めながら
一歩一歩
カルティエのセカンドバッグを
小脇に抱え
H社長に近づく
頃合い良く
ボーイが椅子を引く
軽く会釈をしながら
ありがとう…と
目元だけで微笑む…あたし
H社長と並び
思惑を思い巡らしながら
グラスを合わせた
クリスタルの音色が
これから始まる物語の
ゴングのように
いつまでも尾を引きながら
あたしの耳に木霊していた

街に喧しいほど鳴り響く
クリスマスソング
その音がBGMにならぬ程
BARの店内は静かだ
テーブルに置かれた
仄暗いキャンドルの灯り
陽炎のように揺らめく
グラスを傾ける気配
密かに囁くような話し声
煙草の煙が藻のように拡がり
投影される曰くありげな
カップルのシルエット
其処は…まるで湖底のようだ
此処から繰り広げられる
物語
其々の登場人物が
今…
舌舐めずりをしながら
靄る…彼方から現れる
欲と色の幕開け
そんな夜だった

突然…声高に話す声が聞こえた
トランシーバーの様な携帯を持ち
これみよがし話している
そういえば…先日ご紹介で会った男
医者になったが実家が不動産を所有
御輿にされ…不動産会社を経営した
その男も同様だった
とうこさん…どの株に興味を
お持ちですか?
と…聞かれ
あなたは?と
返したら
僕は飛行機会社が良いな…と
なぜ?
タダで乗れるから…と
幼稚な返答に呆れ
この男とは二度は無いな!と思いながら
テレカを差し出し目と指先だけで
公衆電話の位置を知らせた
あたしは…そんな輩に虫酸が走る

酔いが回り始めた頭に
よぎったフレーズ
女優の樋口可南子氏
「好きになった人に妻がいただけ」
名言か?迷言か?
あたしは…その渕に爪先を
乗せ始めたようだ
妻がいる男
グラス
ネオン
浮かべ
あたし
一気に
呑みほした


あいする♡みなさま
霜月は
好き…
嫌い…
花占いを
しました
さて…どちらに
なりますことやら
♡とうこ♡