2020/09/13
はるかな…いにしえ
愉しみの…ひとつに
他人祖母との銭湯ゆきがあった
洗い桶に
手拭い・石鹸・櫛・剃刀
紅絹袋・湯上り
お稽古の終わった
お弟子さんが
名入りの風呂敷に包み
手渡してくれる
稽古を付けた後の
他人祖母の頸には
薄っすらと
汗の膜が張っていた
あたし・は
その汗を
レースで縁取った
ガーゼのハンケチで拭く
ありがと…と
言いながら他人祖母は
あたしの…小さな手を
くるみ
とうこ…簡単に頸を
人に…
見せちゃいけないよ…と
言う…
夏ほど体は汗で渇き
冷える
湯舟に肩まで浸かり
玉汗が…じんわりと
額に滲むまで
百を…
数える
そして…他人祖母は
あたしの体を丁寧に
糠の…入った
紅絹袋で磨く
時に…
剃刀の刃をあて
衿足を
剃ってくれる
手拭いで産毛を
撫でるように丁寧に拭い
燗冷ましの…日本酒を
全身に…叩き込まれる
そして…もう一度
うなじは
好きな人にだけ
見せるんだよ…
と…
言う
ふたたび
めぐる戀
持て余し
ふたたび
逢う日は
烈しくて

ふたたび
欲しいの
くちびる
陽が去り
陰の扉が
叩かれたようです
朝露浮かぶ
白露を眺め
いにしえの
戀心
ヨコハマ
マダム♡とうこ
♢お届けいたしました♢
あいする♡みなさま
英気を養われます事
珠響《祈》