2019/07/04


ヒステリックな風に
混じる大粒の雨

メドゥーサの髪の様に
吹き荒れる樹木

横浜山手の空…不気味模様




昭和42年8月26日〜29日

最上川…川の激流音が轟き

狂った風が古い木造旅館を揺さぶる

母の膝に小さな弟が乗り

あたし・と…妹は…両サイドに

しがみついていた

白地にエンジ色の花模様…アッパーパー

昭和の時代…お母さん定番…夏ワンピース

ウエストで結ぶ…前掛け

その前掛けの裾を握りしめる…姉妹

うとうと…し始めた頃…隙間だらけの雨戸から

明かりが差し込んだ…その隙間から

そっと…枯れ支流に架かる吊り橋を見

驚いた

間下まで水が迫っていた

地元消防団の車が停まった

母が弟をおんぶ紐に括り付け背負った

あたし・と…妹は…消防団員が抱き上げた

避  難

狂った…激流の濁音…轟音
幼い…あたしは…
背中で聴いた




尊い命が護られます事

珠響《祈》