2018/06/30


振り向いた…あたし・は…

コロン…と…塩梅よく…彼の両腕に…すっぽり…

カラダがハマった…あたし・は…そのまま…

背中を預け…彼を見上げる…緩い…

提灯の灯りで少し影になる…彼の鼻筋…

父に似ている…シャープな鼻筋…

いつも…あたし・は…父に…

お公家さまのようね…と…云っていた…

ヨク似ている…素敵…

そして…彼は…あたし・に…ひとこと…

綺麗だね…って…言ってくれた…

でも…なんとなく…素直になれない…あたし・は…

そっ…と…素っ気なく返事をした…ふた親以外…

こんなに…至近距離で…人さまの顔を見るのは…

生まれて初めてだった…照れもあった…が…

あたし・は…彼が先に居る事が…何気に…

気に入らなかった…間をおいて…身繕いをし…

彼を待ちたかったのに…ふっと…一息つく姿を

見られた事や…心臓の鼓動を聞かれた事…が…

あたし・を…素直にさせなかった…

ホントは…イキナリ抱きしめられた事も…

綺麗と言われた事も…とっても嬉しかったのに…

天邪鬼な…拗ね方が幼い…昭和ガールだった(笑)

腰に回された…彼の両腕が…気恥ずかしく…

あたし・は…カラダをよじり…すり抜けた…

彼は…意外そうな表情をしながらも…

あたし・を自分の左側に据え…左手の指をからめ

手を繋いだ…そう…彼は…左利きなのだ…

境内の階段を下りながら…提灯の灯りに…

映し出される…彼のスッキリとした鼻筋を

眺めながら…指をからめ繋いだ手のひらが…

お互いの手汗でシットリする頃から…

幸せな気分になってきた…

境内の中にも夜店が立ち並び…その一番最初の

ヨーヨー店に…あたし・は立ち止まる…

幼い頃から…色とりどりのヨーヨーが…

水に浮かび…流れて行く様が…大好きだ

それを…飽きずに…ジッと座り眺めている…

彼は…つらないの?と聞いたが…あたし・は…

ううん…つらないの…見ているのと…答える…

あの赤いヨーヨーは必ず…あたし・の…前に止まる

だから…つらないの…と…彼に微笑む…

幾重にも流れる…ヨーヨーの群れは…毎年…

四季折々に訪れる…箱根の紅葉のように見える…

その…一番紅い紅葉色のヨーヨーが…ホントに…

あたし・の…前で…止まった…

彼は…目を見張り…

あたし・は…少し顎を上げ…

唇を…まぁるくすぼめ…

左に小首を傾ける…

見つめあう…ふたりの瞳に

提灯の灯りが揺れていた…