おはようございます。

山中深く潜み、霞を食らって羽化登仙の秘術を学ぶ、道士のトリです（捜索願は出さないでください）。

先週から、「偉大な隠者は、むしろ都会に隠れている」というお話をしている。

隠者とは深山幽谷に隠れて、人知れず修行の日々を送るものという印象があるが、そうではないというお話である。

では、どういう人が大隠で、タオとつながる人なのだろうか。

この前、友人と会ったとき、稲川淳子さん（仮名）という、もと新聞記者のおばさまの話を聞いた。

稲川さんは、都会のマンションに暮らしながら、電化製品を一切使わないという。

掃除機にはじまり、照明、クーラー、洗濯機、冷蔵庫と捨ててゆき、ウォッシュレットはなし、シャワーは水だけ、煮炊きは全てカセットコンロでするそうな。

真夏の昼間、暑い盛りに密閉性の高いマンションのトイレで明かりも換気扇もつけずに用を足している姿を想像するだにホラーだが、そのチャレンジ精神は認めようではないか。

こうしてみると、ある種の傑物かと思うが、どうもタオの人、という感じではない。

どこかに、何か、違和感がある。

稲川淳子さん（仮名）とそのファンの方には申し訳ないが。

では、本当にタオとつながった人は、どんな人なのか？

それはこういう人だ（あくまでも、トリの見解です）。

先日、LAZYさん（仮名）という方からコメントを頂戴した。

LAZYさんは芸能界の一隅におられ、知る人ぞ知る存在であるが、知らない人は知らない。

コメントは、ざっとこういう内容である。

「高尚な志はなく、働かずに食える境遇に憧れつつも、生きてゆくための仕事に追われる日々。
矛盾を抱えながら、都会での生活に慣れきってしまい、不便な田舎暮らしは出来そうにもない」

一見、タオとは正反対の境涯に見えるかもしれない。

しかし、トリ頭老子的見解では、これぞまさに「タオの人」なのである。

老子は「タオとつながって生きる」ことを推奨しているが、まず確認しておかなければならないのは、「タオは自然の豊かなところにしかない」とはひとことも言っていないことである。

タオは、世界中、宇宙中、どこにでも偏在している。

ここは濃密だが、ここは薄い、というようなこともない。

だから、正確にいえば、自然豊かな田舎にもタオはあるが、同じくらい都会にもタオは充満している。

だから、タオの人にとって、ライフスタイルはあまり関係ないのである。

ではなぜ「大隠は市に隠れる」というのか。

それは、物質以前のタオというエネルギー状態とつながりを保つためには、やはり遮るものや邪魔者の少ない環境の方がやりやすいから、実際には深山幽谷で修行するほうが楽なのである。

都会では難しいとされているので、「偉大な隠者」は、その難しいことをやっている、ということになる。

だから「偉大な」といわれるんである。

さて、翻って、わがLAZY師匠のどこが「大隠」であるのか。

師匠のブログを読むと、断片的にご自身のことを語られていて、これまでに何度か死ぬような事故に遭い、病気になり、手術を受け、体の具合が特によろしくない、というようなことが書かれてある。

つまり、普通なら死んでいたであろう事故や病気で、死んでいないということである。

これが、タオとつながって人のありかたである（正確には、ありかたのひとつである）。

LAZY師匠が、幾度も死ぬ目に遭いながら、生き延びてきたのは、タオとつながっているからに他ならない。

ご自身では謙遜して、「無為徒食」「ぐうたら生活」などと書かれているが、そういう生活ぶりが、すでにタオの人の特徴を表しているのだ。

都会の片隅に暮らし、死にそうで死なない、生きて行けるだけの金は自動的に入ってくる（仕事があるから）、家では好きなときに寝て、好きなときに食べ、ビデオで映画三昧、会いたい人には会い、会いたくない人は面会謝絶。

これがLAZY師匠の生き方である。

これを「大隠」と言わずして、何と言うべきであろうか。

※寝る寝る寝る寝は、寝れば寝るほど色が変わる。

市に隠れる その② 無用庵茶話0729