寺院の経理というと、「お寺も経理があるんですか」、「税金納めるんですか」と驚かれることが多々あります。悪い言葉では坊主丸儲けという言葉もあります。

 

坊主が丸儲けできた時代はとっくに過ぎ去ってしまいました。確かに地代や不動産収入など収益事業の収入には税金がかかりますが、収益事業以外の布施収入には税金がかかりません。お布施額は、住職が決めるわけにもいきません、金額も地域、宗派などによっても違うでしょう。ご門徒さんの生活によっても変わってきます。

 

さて主な寺院収入はご葬儀、ご法事のお布施です。そこから給与(役員報酬)をいただきます。なお住職の給与は役員報酬なので会計年度内は年間同額が基本になります。

 

給与をいただくので、帳簿をつける必要があります。お寺の場合現金収入が多いので現金出納帳の記載は大切です。

 

うちの場合を紹介しましょう。

 

1、いただいたお布施、お礼、志などは、先ず市販の入金伝票に記入します。入金先にはご門徒さんの氏名、勘定科目にはお布施や年忌など、摘要には何回忌や葬儀、法名軸書き入れお礼など分かりやすく記入します。

入金伝票の適用には記載欄が数行ありますが、例えば年忌でお車代、御膳料などいただいた場合、お布施〇〇円、お車代〇〇円、御膳料〇〇円など項目別に記入し、一番下に合計を記入します。

葬儀の諷経で呼ばれた場合、相手の施主のお名前、依頼があった寺院名なども記載します。

 

2、事務用品を買ったなど出金があった場合、同じく市販の出金伝票に記載します。支払先は店名、摘要は事務費、旅費、会議費など。摘要には購入したものを記載します。

なお、お寺の場合、寺用と個人用と分けられない場合があります。乗用車などはそうでしょう。その場合使用割合でお寺で5割とか4割とかを計算して計上します。その他ガソリン代、水道電気代なども同様です。

 

3、入金伝票、出金伝票ができたら、現金出納帳(金銭出納帳)に記載します。私はエクセルで作成しています。ノートに手書きより記載項目が多く作れ、後から検索も容易だからです。

エクセルシートの左から日付、科目、相手先、摘要、法名(備考)、収入金額、支出金額、残高の表を作ります。計算は自動でできるように残高に、=I3+G4-H4(一例)など入力し、セルを下まで下ろします。これで自動で計算してくれます。

各月末には合計、累計などを作っておくと便利です。

 

4、寺用の口座通帳も月末には、上と別のシートで作成します。これは年末に収支を確認する場合役立ちます。

 

5、給与を支払います。源泉徴収税額は国税庁のサイトで見られます。住職なら甲欄で税額を求めます。そして国税庁からダウンロードできる源泉徴収簿に記載します。

 

6、納税、これはうちの寺は半年ごと納めています。源泉徴収簿を見ながら、税務署から送付される納付書に記載し、金融機関へ行きます。

 

7、年末調整。一年間の給与総額、税額をもとに、基礎控除、保険料控除、扶養控除などを計算して、納付書に記入し、納税。源泉徴収票なども税務署、市役所に提出します。

 

 

おおまかにこういう流れです。

 

宗派では、納税は大切だ、きちんと経理しましょうとは、住職になる前の研修で言われますが、口で言われるだけ。経理実務の具体例、やり方などは教えてくれません。僧侶の研修会でも、経理実務の講座は宗派でも教区などでも行われるところは少ないでしょう。実際には前住職から引き継ぐか、引き継げなければ税務署に行って教えてもらうしかありません。

 

前住職などが経理をしていなかったり、書類が見つからないなどで、経理はしなくていいと思っている方がいる場合もあるかもしれません。参考になればと思います。

またご門徒さんにも知っていただけたらと思います。