レベッカが幼いときに別れた父は、人気子ども番組「密航者」の主役俳優のレオ。そのレオが姿を消してから十数年経つ。父のことは考えないように生きてきたレベッカだが、あるきっかけで父を探し始める。


 手がかりは、父がレベッカに残した7つのおとぎ話。このおとぎ話がまた神秘的でゾクゾクするのだ。


 私は読み始めから、レベッカには頑なな人を寄せつけない何かを感じた。それがどこからくるものか,読み進めていくうちにわかり、それが父親を探すうちに、協力者に心を開いていき、解かれていく。その過程がとても不器用に描かれ、ああ、人の懐に入っていくというのは行きつ戻りつ、信じて,疑って、信じて,疑って,信じる。それがとても私には親しみを感じる。


 そして、ついに…,謎解きの楽しみもあり、人は、かけがえのない大切なもののためには苦難にも耐え、成熟する。そして、その愛が、新しい世界を創造させる。


 ぱせりさんのブログで知った本。わたし1人では,手に取れなかった。読めてよかった。ありがとうございます。図書館で借りたが、読み終えてすぐ返すのがもったいないような気に久しぶりになった。


『父から娘への7つのおとぎ話』

アマンダ.ブロック 吉澤康子 訳 東京創元社