言うことを聞いてくれない相手を説得する時どうしますか

前にこの手の話で、脅しのテクニック※1を使って言うことを聞かせる、という方法をお伝えしたのですが、その後、書籍などで学びもあったので共有したいと思います。

まず、結論を書きます。

人を説得するために必要なことは、『人には自己選択の自由を尊重されると提示された選択肢を試してみたくなる性質(無意識)が備わっていることを理解すること』です。

つまり、脅しのテクニックもそうなんですが、「宿題しないとゲームはなしです。宿題しなさい」(強い脅し)というよりも、「宿題しないとゲームする時間は30分減るよ。宿題しなさい。」(弱い脅し)で声をかけた場合、確かに前者だとゲームするためには宿題以外の選択肢はないのですが、後者だとゲームの時間は減りますがそれでも少しはゲームができます。ゲームは別にしなくてもいいという人や、少しの時間でいいからゲームをしたいという人は宿題をしないという選択肢を選べるわけです。

相手の想像力を起こし、無意識に働きかけ、本人に「自分で決めた」という感覚を強く残す方法として『BYAF』法※2があります。

同じように、ゲームを題材にすると以下のように例文を作ることができます。

「ゲームはそろそろ切り上げて、勉強しませんか?もちろん、自由に決めてくれていいけど」

ポイントは、「最後に決めるのはあなたです」と相手の意思を尊重しつつ、こちらの要望も問いかけに含ませているところです。

西イリノイ大学の研究では、相手に説得したい内容を伝えたあと、最後の1行で「But You Are Free(〜ですが、あなたの自由です)」のニュアンスを加えるだけで、話し手の望む「イエス」が返ってくる確率が2倍になったと報告されています。

以下、補足です。(私なりの解釈です)

自分も相手も率直な気持ちを伝え合い、爽やかな解決を得ようとするアサーション※3というのをご存知の方は多いと思います。

アサーションには、英語の『D』『E』『S』『C』のステップを踏んで自分の表現を作っていく方法(DESC法)があります。北米でアサーションの訓練をしているバウアー夫婦が開発したものです。

『D』Describe・・自分が対応しようとしている状況や相手の行動描写
『E』Express,Explain,Empathize・・自分の感情を表現・説明する
『S』Specify・・相手に望む行動、妥協案、解決策などこの特定の提案をする
『C』Choose・・提案に対する肯定的・否定的結果を想像し、その結果に対する選択肢を示します。

これもゲームを題材にすると以下のようなセリフができます。
『D』帰宅して早いもんで1時間。ゲームして楽しかったね。
『E』お腹が減ってきたので、お父さんはこれから夕食を作ろうと思います。
『S』ゲームはそろそろ切り上げて、勉強しませんか
『C』切り上げてもよければ食事を作ろうと思います。もしまだ続けるならあと5分くらいでやめませんか

子供がいる家ならあっておかしくない声掛けだと思います。『D』『E』のお互いの状況(事実)やそれに対する自分の感情を述べた部分がその後の提案の根拠になっていて、『S』『C』にあたる部分が受け取りやすいものになっているような印象を受けます。

アサーションの方が事実を基にした根拠が提示されるので相手は提案を受け取りやすい。納得した上で受け取れる、と感じます。受け手の印象は、説得されたではなく、納得させられた、となるということです。そう考えると、人の行動を変えるという意味では、アサーションの方が効果的だと感じます。

提案し、相手に選択してもらう。→説得力を2倍にあげるコミュニケーション(説得はされるが納得できない場合がある)
その前に、相手の状況や行動(事実)描写、事実に対しての自分の感情表現を入れる。→相手も自分も大切にする自己表現(お互いに納得できる)

という訳です。(了)

※追伸
お詳しい方で、補足などありましたらコメント欄にお願いします。

※1 脅しのテクニック
米の心理学者ジャニス・エイブラムズが、高校生を4グループに分け、4つのパターンで「歯磨きをするように」と言った。その結果、最も衝撃を受けたのは強い脅しであったが、実際に以前よりも念入りに歯磨きをするようになったのは、弱い脅しをしたグループ。なぜ弱い脅しの方が効き目があるかというと、強い脅しにはインパクトはあるが、強く脅かされて行動に移ると、どうしても無理やりやらされているというストレスを感じて反発するのだと考えられているから。

※2 BYAF法
米の西イリオイ大学が、説得術に関する研究から質が高い42件をまとめ、およそ2万2,000人のデータのメタ分析(科学論文の中で最も精度の高い研究方法)をした結果、説得の効果を高める魔法の言葉として見出したのが、この「But You Are Free(〜ですが、あなたの自由です)」だった。

※3 アサーション
「自分も相手も大切にする自己表現」という意味。グループや組織の活性化に貢献することを期待されている。

※参考文献
・超影響力/DaiGo/祥伝社/2021年2月10日発行
・必ず誰かに話したくなる心理学99題/岡崎博之/宝島社/2021年4月21日発行
・マンガでやさしくわかるアサーション/平木典子/日本能率協会マネジメントセンター/2015年7月30日発行