人は見た目が9割って知っていますか?

ちなみに、この言葉(人は見た目が9割)をネットで検索すると、竹内一郎さん※1の同名の著書が出てきます。

竹内さんによると、この『見た目』というのは、『言葉以外の情報すべてをひっくるめたもの』であり、美人、イケメンなど「ルックス」を意味するものは「狭義の見た目」。非言語情報全体を意味するものは「広義の見た目」と定義するのだと言う。

また、「狭義の見た目」でいう美形優位が通用するのはせいぜい50歳くらいまで、50歳を過ぎたらソクラテスが言う意味での「顔」※2つまり「広義の見た目」が重要となるのだそうです。

心理学においても似たような言葉があります。メラビアン※3の法則(55-38-7のルール、3Vの法則などと呼ばれる)というものです。

メラビアンによれば、表情などの視覚情報が、相手の第一印象に最も影響を与え、次に大事なのは声のトーンなどの視覚情報。話す内容は重要ではない。彼によれば、視覚55%、聴覚38%、言語7%の割合で相手に影響を与えるのだそうです。

しかし、この話には前提があります。それは、メラビアンの法則は言語情報と表情や身なり、話し方に矛盾があった場合、人は視覚や聴覚の情報を重視する傾向にあるという事です。

何故、矛盾した情報をそのまま受け取れないかというと例えば認知的不協和理論※4で説明できます。勉強など知識を受け入れ理解することは難しいです。反面、画として目に入ってくるイラストや、音として耳に入ってくる曲は受け入れ理解しやすいです。こう言えば納得できる方も多いと思います。

僕自身の経験を話します。現職場に入ってまもなくリーダー職となり、日々業務報告をする中で上司より期待をこめて指導を受けました。当たり前ですが、仕事ですので上司の話はとてもシビアです。明らかに僕は人間扱いされてないな、という内容。でも、上司はそれを笑いながら話す方。僕は生来どちらかと言えば生まじめな人間でした。矛盾する内容を受け取りきれず、朝起きようにも身体が起こせない、休みの日も休んだ気が全くしない、という状態になりました。確定診断こそ受けていませんが、あれは『鬱』でした。うまく降格人事、配置転換となり、それ以降僕のメンタルヘルス※5は改善していきましたが、あのままあの状態が続くと統合失調症となったかも知れないと考えることがあります。

あれから何年も経ち、知識も、経験も増えたことで耐性は出来たように思います。今となれば、「職場は社会資源のうちお金を稼ぐ場所である。自分の価値観を持ち込む場所ではない。価値観はプライベートで幾らでも発揮したらいい。職場は人間扱いされない方が企業が成長できて、そこで働く私達も幸せになる。」と考えるまでに至りました。※6

今の僕があるのはあの頃の上司のおかげです。上司に感謝しています。

最後の方、余談となりましたが、竹内一郎さんが言う見た目9割というのは、言葉以外の全てをひっくるめた見た目。メラビアンが言う見た目93%(視覚55%+聴覚38%)は表情などの視覚情報や声のトーンなどの見た目。どちらにしても、人は見た目から影響を受ける傾向があるので、相手に好印象を持たれたければ、表情や声といった非言語的な雰囲気に気を配るほうが良いというお話でした。(以上)

※1 竹内一郎
1956年福岡県生まれ。劇作家・演出家・著述業。横浜国大卒。『哲也 雀聖と呼ばれた男』の原案担当。著書に『人は見た目が9割』など。

※2 ソクラテスが言う意味での「顔」
アテナイ出身の古代ギリシアの哲学者。「人間の中身は顔に表れてくるものだ」と話したと、古代ギリシアの哲学者・クセノフォーンが『ソクラテースとの思い出』にて記載されている。

※3 メラビアン
アルバート・メラビアン。1937年生まれ。米の心理学者(アルメニア系アメリカ人)。UCLA心理学名誉教授。非言語コミュニケーションの研究や、印象形成の法則であるメラビアンの法則で有名。

※4 認知的不協和理論
自分の考えと行動に矛盾(不協和)が生じた時、自分の行動を正当化するために自分の認知を修正してしまうこと。

※5メンタルヘルス
心の健康状態を意味する言葉

※6 意識構造学(織学)
組織内の誤解や錯覚がどのように発生し、どうすれば解決できるかを明らかにした方法。近年は、株式会社織学の代表取締役社長でもある安藤広大さんが有名。

※参考文献
・あなたはなぜ誤解されるのか/竹内一郎/新潮社/2021年1月20日発行
・図解心理学用語大全/齊藤勇/誠文堂新光社/2020年5月18日発行
・とにかく仕組み化/安藤広大/ダイヤモンド社/2023年5月30日発行