知的障害はIQ85未満とされていたことを知っていますか 

ちなみに現在(2024年6月)知的障害は70未満であると定義※1されています。

1950年代の一時期、知的障害はIQ85未満とされたことがありました。IQ70〜84は現在では「境界知能」と言われる範囲です。

知的障害はなぜIQ70未満に下げられたのかと言えば、様々な理由があるのですが、IQ85未満とすると知的障害と判定される人が全体の16%くらいになり、人数が多く支援現場の実態に合わないなどの理由からのようです。IQ70未満とすれば、全体の2%です。

かなり以前の話ですが、大阪梅田で地下鉄に乗ろうとした時に、ちょうど前に年齢20才前後の黒髪細身の男性がリュックを背負って並んでいたのです。

見るとリュックのジッパーを閉め忘れて、中身が丸見え、長財布がリュックの外顔に顔を覗けていまして、なんらかの衝撃が加われば落ちておかしくないような感じでした。

なので、その人に並ぶように横に立って、「背負っているリュックのジップが空いていて中身が落ちそうになってますよ」と声をかけたんです。

すると、こちらを向いて一言。
「ファッションで開けているんですよ」と。
表情を変えずにです。
そして、リュックを閉めることなく、すぐにその場を立ち去っていきました。梅田の地下鉄なんで、電車なんて乗り過ごしてもすぐ来ますから困らないのでしょう。

取り残された僕は、親切心のつもりで声をかけたつもりが、まさかの反応だったので理解できず、長年経ったのに覚えていました。

しかし、男性の立場から考えてみたら、知らない男性から突然声をかけられ、被害的に受け取った可能性がないとは限りません。

返ってきた言葉から想像すると、知らない人からバカにされた、と思ったのかも知れません。

そうなると、対人関係のあり方に基づく要因や、自信のなさが関係しているのでしょう。もしかしたら、IQ70〜84のかつての軽度知的(14%)なのかも知れません。

WAIS※2など現在主流の知能検査は、大雑把な知能の傾向把握には役立つとされています。しかし、これを全てだとすると、知能検査では問題ないが日常生活や社会生活で困っている人を取りこぼしてしまうことが問題となります。

困っている人の言葉に耳を傾け、彼らに必要な社会資源に結びつけることができるようなカウンセリング力を身につけていきたいと思います。(以上)

※1  IQ70未満が知的障害の定義
アメリカの精神医学会のDSM-5や世界保健機関(WHO)のICD-10などの専門機関による

※2 WAIS(Wechsler Adult IntelligenceScale)
ウェクスラー式知能検査の一つ。適用年齢によって3つの検査がある。大人用のWAIS、児童用のWISC、幼児用のWPPSIの順でつくられた。知能を「目的をもって行動すること、合理的に考えること、環境を効率的に処理すること、それらができる個人の総合的かつ全体的な能力である」と定義している。知能の定義として代表的なもの。

参考文献
・ケーキの切れない非行少年たち/宮口幸治/新潮社/2019年7月20日発行
・一発合格!公認心理師対策テキスト&予想問題集/心理学専門学校ファイブアカデミー/2019年3月5日発行